新王者・矢吹正道が亡き「拳友」に勝利報告 感謝のあいさつ回り

伊藤雅哉
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 22日に京都市体育館であった世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級王座戦で新王者になった矢吹正道(29)=名古屋・緑ジム=が25日、昨年3月に21歳で亡くなった元プロボクサーの田中蓮志さんに勝利を報告した。

 トコナメジム所属のプロボクサーだった田中さんとは、練習で拳を交えた仲間だった。ベルトを持って愛知県常滑市の田中さんの自宅を訪れた。

 田中さんの父・寿志さんによると、前夜に矢吹から「明日、うかがってもいいですか」と連絡があった。「他にも行く先はたくさんあるだろうに、まさかウチにまで来てくれるなんて」

 8度防衛中だった前王者の寺地拳四朗(29)=京都・BMBジム=に9回に追い詰められながら、10回にTKO勝ちした。

 仏前に手を合わせる矢吹の両目はどす黒いままだった。田中さんの家族と記念写真に納まり、思い出話に花を咲かせたという。

 生前、矢吹は田中さんと実戦練習のスパーリングをしたことがあった。「自分にあこがれてくれとるんやな」と感じたという。交流は続き、田中さんは試合の応援にも来てくれた。

 その死を知り、矢吹は日本タイトルマッチで着用するトランクスに「田中蓮志」の文字を入れた。

 「行けるところまで(田中さんを)連れて行く」と誓い、世界戦のために作ったTシャツ、ガウンにも「Renshi」の文字があった。

 矢吹は王座戦から一夜明けた23日、報道陣のオンライン取材に応じた。チャンピオンになってまず何をしたいかと聞かれると「お世話になった人たちにあいさつ回りがしたいですね」と話していた。

 この世界戦が決まってから、自営の建築業をセーブして練習に励んだ。生活費に困らないように、多くの人が資金的に援助をしてくれた。

 その恩も、自分を慕ってくれた亡き後輩への思いもその胸にしっかり刻まれているのだろう。

 17歳で父になり、苦労をした。「世界チャンピオンになってもてんぐにはなりたくない」と言っていた。

 あいさつ回りは続く。伊藤雅哉