馬と田んぼを往復、トラクターはやめた 棚田の未来に「新たな物語」

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高橋俊成
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 天高く馬肥ゆる秋。あえて馬を使った農業を始めた人たちが、中越の山間にいる。一見、時代に逆行するようだが、見据えるのは未来の農業だ。

 馬を使う農業、「馬耕」を始めたのは、新潟県十日町市の中山間地、棚田で知られる松代地区の本柳学さん(48)。代々続く農家の跡取りだが、地区は年々高齢化が進む。機械化しづらい棚田の将来が心配だった。

 転機は、トラクターの買い替えを考えていた昨年3月。地元の居酒屋で合田真さん(46)と偶然出会い、そこで聞いた馬耕の話にひかれた。

 「馬は草を食べて力を出し、排ガスもない。ある意味、究極のバイオ燃料かもしれない」と語る合田さんは、アフリカでバイオ燃料の原料栽培などを手がける「日本植物燃料」(東京都)の経営者。また、農林業での馬の活用・普及に取り組む一般社団法人「馬搬振興会」(岩手県)の活動にも協力し、松代での講習会に訪れていた。

 本柳さんは、馬耕が「棚田を活用できるチャンスだ」と考えた。珍しい馬耕は、ほかにない特長にできると思い、トラクター購入はやめた。振興会の代表理事で、馬耕の技術を受け継ぐ「馬方」の岩間敬さん(43)の力を借り、馬で耕すことを決めた。

 今年5月、松代の棚田の一角に、バシャバシャと水しぶきを上げながら水田を歩く馬がいた。「馬鍬」という木製農具を馬に引かせて田の中を何往復もし、土を掘り返しながら平らにする「代かき」。今は機械に代わってしまったが、昔ながらの農作業の風景だ。

 「馬は一緒に頑張ってくれる頼もしい存在。『懐かしいね』と足を止めてくれる人もいて、うれしいですね」と本柳さんは泥のついた頰をゆるめた。9月には310キロの米を収穫した。

 馬方の岩間さんと、日本植物燃料の合田さんは、松代や津南町で馬耕を根付かせようと、株式会社「三馬力社」をつくった。子どもが馬と農作業にふれる催しや、観光化も考えている。「田んぼは楽しいんだ、農業は魅力ある仕事なんだと知ってほしい」と岩間さん。本柳さんは「馬耕は難しい。けど、機械と違って一人じゃないから頑張れる。他にはない取り組みが松代に新たな物語を生んでいくはず」と期待を寄せている。

 三馬力社の活動は広がっている。

「物語」が加わることで、新たな価値を生む

 6月、アフリカ・セネガルの…

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