新横綱優勝の照ノ富士 口上の「不動心」を体現 新しい時代の幕開け

松本龍三郎
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 その瞬間は、結びの一番を待つ土俵下で迎えた。

 明治時代に優勝制度ができて以降、長い大相撲の歴史で8人しかいなかった新横綱での賜杯(しはい)。1差で追う後続の敗退により、取組前に照ノ富士の快挙達成が決まった。「優勝にはほっとしたけど、気持ちの中で特に変わりはなかった」。直後も引き締まった表情が崩れることはなかった。

 たくましさが際立つ15日間だった。6日目に単独先頭に立ってから、結局一度も、後続に追いつかせなかった。その間には二つの黒星もあったが、連敗はしなかった。

 楽日の結びも盤石の内容。正代を相手にまわしをつかむと、ひざを曲げて丁寧に寄り切った。観客をがっかりさせるような相撲は最後までなかったのではないか。

 横綱として臨んだ初めての場所を戦い終え、照ノ富士は改めて地位に言及した。「土俵の上でも、土俵の外でも、(相撲界で)一番上の存在だと自覚して、責任を持ってやっていけたらなと思います」

 一泡吹かせようとぶつかってくるどんな相手にも、勝ち続けなければならない。それが綱を張る者に課された使命だ。計り知れない重圧を連日受けてもなお、「考えてもしょうがない。その日の一番に全力をかけて土俵に上がるだけ」と言い切る強さがあった。

 昇進伝達式で口にした“不動心”。秋場所でその言葉を体現した横綱照ノ富士の時代が幕を開けた。(松本龍三郎)