敗れても動じず「双葉山の生き写しのよう」 杉山邦博さんが見た白鵬

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 歴代最多の優勝45度を誇る大相撲の横綱白鵬(36)=モンゴル出身、宮城野部屋=が現役引退の意向を固めた。大相撲報道に携わって68年目の元NHKアナウンサー杉山邦博さん(90)は、「45度の優勝もさることながら、最大の勲章は双葉山に次ぐ63連勝だ」と言う。

 2010年、白鵬初場所途中から連勝街道を走った。そのさなか、杉山さんに「木鶏(もっけい)」の意味を尋ねてきたという。

 中国の故事にちなみ、まるで木彫りのように何事にも動じず、その立ち振る舞いにどんな鶏も逃げてしまう――。そんな闘鶏のことで、連勝が69で止まった双葉山が知人に「イマダモッケイタリエズ(いまだ木鶏たりえず)」と電報を打ったことで有名だ。

 その由来を紙に丁寧に記し、杉山さんは白鵬に手渡した。

 双葉山の大記録に迫った白鵬は、その年の九州場所2日目で当時平幕だった稀勢の里(後の横綱)に敗れる。そのときの姿が、杉山さんには印象的だった。

 「何事もなかったように淡々と引き揚げた。あの姿は双葉山の生き写しのようだった。大相撲の伝承文化について一番考えた、白鵬にとって一番輝いていた時期だと思う」

 近年、土俵内外での言動が物議をかもした。自身最後の取組となった7月の名古屋場所千秋楽では、ひじ打ちのような攻撃や張り手が横綱審議委員会から問題視された。杉山さんは「ほめることはできないが、非難はしない」とした上で、「(名古屋場所まで)1年間休場していて、何が何でも優勝したいという、勝負師の強い気持ちの表れと見ている」と続けた。

 10年に発覚した横綱朝青龍の暴行事件や野球賭博事件、11年の八百長問題などで揺れた角界を、一人横綱として引っ張ったのが白鵬だ。「あのとき白鵬が孤軍奮闘してくれたから今日の相撲界があると言っても言い過ぎではない。心から『ありがとうございました』と言いたいですね」