第3回ロケットに残したママの指紋 本当の目的、4歳の娘はいつかきっと

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編集委員・田村建二
写真・図版
近藤咲子さん(右)に教えてもらいながら、みんなでロケットをつくった=2019年11月1日、家族提供
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だいすきノート 第3話

 スキルス胃がんと診断されたみどりさんは、32歳だった2019年10月、慶応大病院に入院し、治療を受け始めた。

 個室に入り、痛みを抑えるモルヒネや、息苦しさを和らげるステロイド薬を使いながら、週に1度のペースで抗がん剤の点滴を受けた。

 工場エンジニアの夫、こうめいさん(37)は、勤務を在宅に切りかえ、幼稚園に通う双子の娘、もっちゃん、こっちゃんのお弁当づくりを始めた。それまでは、みどりさんに任せきりだった。

 コロナ禍が来る前のこのころ、在宅勤務は珍しかった。でも、職場は理解を示してくれた。

 週末などに病院に来た娘2人は、ふだん会えない分、甘えたい気持ちが爆発して、ベッド上にいるママに飛び乗り、よじ登った。

 「大丈夫かな」。こうめいさんたちはハラハラしたが、みどりさんは平気そうだった。

 モルヒネをうって抑えてはいたものの、体の痛みは続いていた。でも、娘たちといるときは、痛みを忘れられた。

 2人は「ママの応援団だよ」といって、病室にお気に入りの人形を持ち込み、一緒に遊んだ。

 費用はかかるけれど、個室に入ってよかったと、こうめいさんは思った。

「いつもママと一緒」

 11月1日、看護師長だった近藤咲子さん(65)=2021年3月に定年退職=が、お見舞いにやってきたもっちゃん、こっちゃんに声をかけてきた。

 「いっしょにやってみない?…

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