「差別なんてない」の主張にえぐられた心 被差別部落出身の原告

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寺島笑花
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 全国の被差別部落の地名などをまとめた本の出版や地名リストのネット公開は違法なプライバシー侵害だとして出版社側を訴えた訴訟で、東京地裁は「公開は公益目的でないことが明白だ」と認め、出版禁止やネット上の削除などを命じた。この裁判には、全国の被差別部落出身者らが原告として参加した。その一人、部落解放同盟山口県連合会で書記長を務める川口泰司さん(42)は判決について「地名リストの公開が違法だと認められたことは大きな前進だ」と話した。

 大学を卒業後、部落解放・人権研究所に勤務。2005年からは山口県人権啓発センターの事務局長も務め、セミナーなどを通じて差別撤廃のための啓発活動に取り組んできた。

 全国水平社が創立されて約100年。1969年に同和対策事業特別措置法が施行され、同和地区の住環境整備や就労対策、人権教育などが進められた。結婚差別に通じていた身元調査は、本人以外の戸籍閲覧が制限された。先人たちが少しずつ差別を克服する取り組みを積み上げてきた。

 それでも、学校での部落出身者に対する差別発言や、被差別部落出身であることが理由で結婚に反対されている、といった相談は絶えない。「部落差別って今でもあるんですか――。いつも聞かれる質問ですが、このギャップこそ差別の現実です。差別の末に駆け落ち同然で結婚し、家族に会うことができない当事者が今もいる」

 今回、被差別部落の地名リス…

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