求むアライグマ情報 市民参加型の調査実施中 捕獲相次ぐ新潟で

友永翔大
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 【新潟】生態系などへの影響から「特定外来生物」に指定されているアライグマが、上越地方で捕獲されたり、その痕跡が見つかったりする例が相次いでいる。繁殖し定着している可能性があるとして、研究者らが実態把握に乗りだした。爪痕などの痕跡の情報を一般の人から集める調査が進められている。

 調査しているのは、NPO法人「新潟ワイルドライフリサーチ」(長岡市)と長岡技術科学大の野生動物管理工学研究室。NPO法人の副会長の山本麻希・同大准教授によると、アライグマは神社仏閣などをねぐらとし、柱や木を両手で挟んで登る。その際に5本の爪痕が残る。高さ80センチ以上の場所に、4~5センチ幅の5本の爪痕が残るのが特徴だという。一般の人にこうした痕跡を撮影、写真を専用サイトに投稿してもらい、集めたデータをもとに生息地域を明らかにする。

 県内では過去に狩猟で捕獲された記録があるが、アライグマの分布実態はよく分かっていない。5年ほど前に新潟大の箕口秀夫教授(森林生態学)がシカの分布を調べるために上越市に設置したセンサーカメラにアライグマが映ったことで本格的に調査が始まった。2019年の糸魚川市の調査では、市内の神社仏閣72カ所の約8割でアライグマのものとみられる爪痕などの痕跡が見つかった。

 今年5月には、上越市内で初めてアライグマが捕獲された。オスとメスの2頭で、7月には子ども2頭も捕獲されたことから、山本准教授は上越・糸魚川周辺では繁殖していると考える。山本准教授が上越、柏崎両市境に設置したセンサーカメラでも姿が確認された。今後、県内に生息範囲が広がる懸念もあり、今回の調査に乗り出した。

 県は6月、県や市町村の担当者、専門家らによる検討会を実施。専門家からは早急に実態を把握するべきだとの指摘があった。県環境企画課の担当者は、スイカやトウモロコシなど農作物被害などが県内では確認されていないことから「被害が表に見えてきづらい部分がある」とした。そのうえで、「分布や生態など実態把握や生物多様性についての普及啓発をこれから進める」と話した。

 だが、山本准教授は「増える前に対策しなければ手遅れになる」と訴える。市街地近くで栽培される果樹の被害が顕在化するころには、市街地にアライグマが出没するほど数が増えていると指摘。「農作物への被害は、生態系が破壊された後になる」と危機感を強める。

 調査は9月30日まで。まだ報告例が少ないといい、情報を求めている。調査結果は12月11日に被害実態や対策を議論するオンラインでのシンポジウムで報告される予定。調査の詳細などは新潟ワイルドライフリサーチのホームページ(http://wironkemono.mods.jp/hp/racoon2021/link/link.html別ウインドウで開きます)で確認できる。

農作物や固有生物の被害懸念

 アライグマは北米原産で、1970年代以降にペットとして輸入が増えた。その後、飼いきれなかったり、逃げたりした個体が野生化。環境省の調査では、最近約10年で国内で生息域が約3倍に拡大した。繁殖力が高く、対策を講じなければ10年で50倍に増えるとの試算もある。雑食のため、農作物や日本固有の両生類や爬虫(はちゅう)類などを食べることから、特定外来生物に指定されている。

 日本爬虫両棲類(はちゅうりょうせいるい)学会員でカエルなどの生態に詳しい上越科学館の佐藤直樹副館長によると、上越地域での両生類や爬虫類への被害はまだ確認できていないという。だが「在来種の被害がわかったときにはもう遅い」と危機感を募らせる。特に県内に生息する希少なサンショウウオの仲間の中には、繁殖可能になるまでに3~4年かかり、一度に産卵数が少ないものもある。環境変化で個体数が減る中、アライグマの被害が加わればさらに数が減る可能性がある。アライグマの影響で両生類と爬虫類の数が減った地域には、サンショウウオの仲間などの産卵場所をシェルターで守る取り組みを行っているところもあるという。(友永翔大)