彦根出身の絵師・張月樵 「花鳥図」のキテレツな表現

学芸員 高木文恵
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彦根城博物館 収蔵品から

 【滋賀】江戸時代中後期、彦根に生まれ、京都画壇で勢力をもつ四条派の祖・呉春(ごしゅん)のもとで学び、名古屋でブレークした絵師がいました。その名は張月樵(ちょうげっしょう、1765~1832)。彦根城下の表具屋の倅(せがれ)として生まれ、はじめ、京に出て活躍した醒井(さめがい)村(現在の米原市)出身の市川君圭(くんけい)に学びました。

 本図は、壮年期の作とみられる花鳥図です。中央に奇怪な形の岩、布を裂いたような不思議な水流、行水を楽しむかのような八哥鳥(はっかちょう、ムクドリ科の鳥)、そして多少の狂気も感じさせる表情の小鳥たち――何ともキテレツな絵です。

 月樵は、人の目を驚かす構図や豊かな生命観、癖の強い奇怪な表現を得意としました。それでいて絵全体は絶妙なバランスを保っています。中国の明清時代の癖の強い絵や、円山応挙(まるやまおうきょ)一門の俊英・長沢芦雪(ろせつ)の画風などを巧みに取り込み、そこに気取りのない親しみやすさを加え、「月樵様」とでもいうべき個性的な画風を作り上げました。

 名古屋では、当時隆盛を誇っていた俳壇が世に出した俳書の挿絵も数々手がけ、また、尾張徳川家の御用をつとめ、帯刀を許されたと伝わります。(学芸員 高木文恵)

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 企画展「奇才の絵師 張月樵―彦根~京~名古屋への道―」(10月18日[月]まで)で展示中。一般500円、小中学生250円。問い合わせは博物館(0749・22・6100)。