「なんて親切な…」言葉巧みな電話 450万円と生きがい奪われた

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伊藤繭莉
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 電話による詐欺事件が千葉県内で多発している。特に1千万円以上の高額被害が目立っており、今年の認知件数は前年同期と比べても大幅に増えている。実際に被害にあった70代の女性に、手口や電話を受けた時の心情について語ってもらった。では、被害を防ぐにはどうすればいいのだろうか。県警に最近の詐欺の傾向や、私たちがとれる対策などを聞いた。(伊藤繭莉)

電話1時間でカードすり替え被害

 知らぬ間にキャッシュカードをすり替えられ、450万円を奪われた――。松戸市内の70代の女性は、1時間余りの電話で詐欺被害に遭った。その手口とは。

 3月5日午後6時半ごろ、家電量販店店員を名乗る男から電話がかかってきた。

 「あなたのカードで買い物しようとした中国人を捕まえました」と言われた。あれ? 見覚えのないカードだ。カードを作っていないと伝えると、「でも、ありますよ。松戸市内の方のカード4、5枚もありました」ときっぱり言われた。カードを不正に作られたのかな。なんで自分の名前を知っているのだろう? 少し疑問が残った。

 間を置かず、今度は関東財務局を名乗る男から電話があった。

 「中国人を松戸東署まで連れて行きました。あなたのカードは使えなくなりました」と言われた。なんで財務局なのか、と一瞬思ったが、公的機関が犯人を警察まで連れて行ってくれたことに、一安心した。加えて、丁寧で柔らかく落ち着いた男の声に、安心しきってしまった。

 男によると、「使えなくなったカード」は、封筒に入れて、後日、松戸東署に持って行く必要があるという。その指示が細かく、長かった。別の男性職員が自宅に封筒を届けること。封筒にカードと、住所や氏名、暗証番号、銀行名を書いたメモを入れること。7日後に松戸東署から電話があるので、封筒を届けること――など。指示を書き留めるのに必死で、質問する余裕はなかった。書き留めたメモは3枚に及んだ。わざわざ封筒を自宅まで届けてくれるという電話の男に対し、「なんて親切な方なんだろう」と思った。

 電話の途中で、インターホンが鳴った。玄関を出ると、サラリーマン風でスーツを着た30代ほどの男がいた。電話は切らないように言われていた。

 言われるままに、封筒にキャッシュカード2枚を入れた。男に「割り印が必要だ」と言われ、いったん封筒を男に預け、隣の部屋に印鑑を取りに行った。割り印を押すと、封筒を保管するよう言われた。男が家を出た後も電話が続いた。最初の電話から約1時間続いた。

     ◇

 翌朝、息子の妻に電話で昨晩のことを伝えると、詐欺だと指摘された。封筒を開けると、使い古されたギフトカード2枚が入っていた。手が震えた。割り印を押すため、印鑑を取りに行った際に、封筒をすり替えられたようだ。一晩で、計450万円が引き落とされていた。

 若い頃から働きづめで、コツコツためたお金だった。いまは孫のため、成長に合わせて学習机などを贈るのが、生きがいだ。家族へのプレゼントや自分の老後のために使いたかった。「バカだった」。何度も自分を責めた。見知らぬ男性や不審な車を見ると、詐欺師ではないかと怖くなった。初対面の人とは会わないようにしている。被害にあった夕刻になると、被害を思い出し、嫌になる。「精神的に参っています」。いまは電話を留守電設定にし、相手の名前を聞いてから出るようにしている。

増える1千万円超の高額被害

 今年は1件あたりの被害額が…

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