「ミソジニー(女性嫌悪)」。男性の心の奥底に潜む女性への差別意識に関連し、SNSなどで最近よく見かける言葉です。女性「嫌悪」……どういうことなのでしょうか。
「わきまえない」女性に振るわれるムチ 江原由美子さん(東京都立大学名誉教授)
ミソジニーは女性嫌悪と訳されますが、女性一般への嫌悪感情とは異なります。男性の幻想を裏切って、「ノー」と言う女性へのバッシングです。
大学で授業をしていると、こんな話を聞きます。女子学生がアルバイト先の飲食店で「笑顔で」などと指示されてその通りにすると、男性客が「彼氏、いるの?」などと言ってくる。女性だから優しく相手をしてくれるだろうと思い込んでいるわけです。女性は面倒臭いと思いつつ、受け流します。もしツンケンした態度を取った場合、相手が怒り出すことは容易に想像できるからです。
私はジェンダー秩序という言葉を使いますが、女性というカテゴリーに、「気配り」「優しさ」などを読み込む。ミソジニーとは、そういう秩序に割り当てられた女性性から外れた女性、いわば「わきまえない」女性に振るわれるムチです。
ですから「女性が好き」かどうかと、ミソジニーかどうかは関係ありません。わかりやすい例が、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の発言でした。「(組織委員会の女性は)わきまえておられて」などと言った。「女性を蔑視する気持ちは毛頭ない」と釈明しましたが、自分にとって都合のいい女性をいくら大切にしても関係ない。女性を、自分の意をくむかどうかで分けている。その意味で、ミソジニーのメカニズムを象徴する言葉です。
記事の後半では、二村ヒトシさん(アダルトビデオ監督・著述家)が男性の根底にある意識を、木村忠正さん(立教大学教授)がネット社会で「ミソジニー」は広がっているのかを分析します。
ムチの一方でアメもあります…
- 【視点】
この問題の根底にあるのは、日本を代表するジェンダー研究者である江原由美子先生が指摘されているように、我々が「女性というカテゴリーに、「気配り」「優しさ」などを読み込む」ということです。女性だけを対象にした企業の研修で、男性の「上司にやられて
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