第1回「サルの社会とそっくりだ」 ゴリラ研究者が見た菅政権の忖度政治

有料会員記事2021衆院選

(寄稿)
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 安倍晋三前首相とその路線を継承した菅義偉首相による約9年の長期政権が、まもなく幕を下ろす。総選挙を前に、いま私たちが考えなければならないことは何か。日本学術会議前会長で、ゴリラ研究者としても知られる山極寿一・京都大前総長は寄稿で、菅首相による会員候補6人の任命拒否問題や新型コロナウイルス対策、東京五輪の開催の経緯を振り返り、「科学の軽視は忖度政治へつながる」と警鐘を鳴らす。

     ◇

 総裁選への不出馬を宣言してから、マスコミの菅総理への論調が変わってきた。いさぎよいとかコロナの責任を取ってかわいそうだとか、同情するような意見が多い。ちまたでは、予想の難しいコロナ対策は誰がやってもうまくいかなかったのだから、菅総理の責任ではないという声も聞かれる。しかし、それはおかしい。だいいち菅さんに対して失礼であると思う。

 この1年は菅政権が国の方向を決めた。その采配を取っていたのが菅さんである。なかには素晴らしい決断もあった。2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするにするという宣言もそうだし、いちはやくデジタル庁を立ち上げたのも、「黒い雨」訴訟の上告断念という英断を下したのも菅さんの未来に対する決意が表れていると私は評価している。

 しかし、科学への軽視と科学者の無視は、菅さんの失政を生んだ大きな原因だったと思う。1年前、日本学術会議が推薦した6人の学者の会員への任命を拒否したことがそもそもの始まりだった。拒否の理由を尋ねると、「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動の確保」という訳のわからない答えが返ってきた。しかも、自身は会員候補者のリストすら見ていないという。いったいどんな理由で6人が会員として不適切と判断したのか、それが語られないまま1年が過ぎた。

 その間、日本学術会議が税金を無駄遣いしているとか、会員が優遇されているとか、政府に何も提言していないとか、見当違いの誹謗(ひぼう)中傷が自民党議員から続出して世論を誤った方向へ誘導した。これは問題のすり替えだし、明らかに菅さんへの忖度(そんたく)である。

総選挙が迫るなか、いま私たちが考えるべきことは何か。有権者として何を問われているのか。寄稿やインタビューを通して考えます。

 私はこれらの言動を見ていて…

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