アフガン女子王者、五輪の夢は腕に刻んだ 祖国を逃れ1人だけの再起

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伊藤喜之
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 左腕にある五輪マークのタトゥーを指さした。

 記者が「夢は何か」と尋ねた時のことだ。

 女子ボクシングのアフガニスタン代表、シーマ・リザイさん(18)。母国に五輪メダルを捧げたい。ただ、そう願っていた。

 だが愛する国は8月、イスラム主義勢力タリバンに突如として権力を掌握された。

 「タリバンなんて一度も見たこともなかった」

 シーマさんが生まれたのは、タリバンの旧政権が2001年に崩壊し、女性の就学や就業が認められるようになって間もないころだった。

 「周囲の誰もやっていないようなスポーツがしたい」。カブールで、16歳で本格的に始めたのがボクシングだった。相手を殴り倒すボクシングが持つ戦闘的なスタイルは、社会の中で女性が活躍する意識を広めることにもつながるとも思えた。

 最初は「女性は入れさせられない」と入会を渋っていたジムのコーチも彼女の熱意に根負けした。すぐにめきめきと腕をあげ、その年のうちに軽量級の国内王者になった。そして、アフガニスタン代表チームにも選ばれた。

 今夏の東京五輪では政府がボクシング代表に予算を付けてくれず、参加できなかった。「2024年のパリ五輪こそは」。気持ちを入れ直し、練習に励んでいた。

 一方、9月には大学受験も控え、国内トップの国立カブール大学への入学をめざして毎日勉強にも追われていた。

 8月15日。そんな日常がすべて一変した。

 タリバンがカブールに入った…

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