「HBO」の動画配信戦略に見る日本の「特殊性」を考える

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アナザーノート 藤えりか記者

 私のライフワークの一つにもなってきた映画取材。その一環で、動画配信サービスの動向も見続けてきた。米国と日本などの業界模様を取材していると、米ワーナーメディア傘下の「HBO」の存在の大きさを感じる。ただし、日本でも人気の良質なドラマや映画を数々提供してきたにもかかわらず、なぜかその名を掲げて単独進出はしておらず、ありようとしては不思議だ。背景を考えるうち、外資にとっての日本市場の「難しさ」が見えてきた。

 HBOそのものは、日本では知名度が高いとは言えない。でも、「ウォッチメン」や「ゲーム・オブ・スローンズ」、「チェルノブイリ」、「セックス・アンド・ザ・シティ」、「シリコンバレー」、「ニュースルーム」、太平洋戦争の日米の激烈な戦いを描いた「ザ・パシフィック」などを製作・放送した、と言えばピンとくる人もいるかもしれない。海外ドラマ好きなら全シーズンを制覇するような人気作品群を届けてきた。

 昨年5月、地元・米国で動画配信サービス「HBOマックス」を立ち上げ、世界最大手ネットフリックスを追い上げている。それが、日本ではネットフリックスと違って「直接進出」はせず、今年3月に独占契約した動画配信国内3位のU―NEXT(ユーネクスト)を通じて、新作を定額制で配信することとなった。

 HBOは1972年創業の老舗の有料放送局。米ワーナーメディアの傘下で、視聴者への課金を主な収益源とし、多大な予算や人材を投入。スポンサーの意向にとらわれない自由で質の高い作品作りをウリにしてきた。「大予算をかけた自由な作品作り」と言えばネットフリックスのお株のようだが、実はその手法、HBOが元祖とも言える。

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3月30日、米国のHBO及びHBOマックスの定額制での独占配信契約について発表するU-NEXT(ユーネクスト)の堤天心社長(左)と本多利彦COO(最高執行責任者)(右)。手前にHBOの人気シリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」の看板を掲げている=東京都港区、藤えりか撮影

 3月末、U―NEXTが東京都内で開いた記者会見に参加した。本多利彦COO(最高執行責任者)は「(HBOとの独占契約で)1千エピソード以上のラインアップをそろえる勢いだ。1作品で製作費100億円以上の作品が相当あり、(合計で)何兆円もの世界最高峰のドラマ作品が一気にU―NEXTに登場する」と、強気だった。つまり、それぐらい大作ぞろいなのだ。実際、HBO作品は米テレビ界の最高峰であるエミー賞の常連で、昨年は最多30部門、今年9月はネットフリックスに次ぐ19部門で受賞している。

 そんな人気ブランドだけに、これまで日本における「場」は移ろい続けた。

 レンタルDVDのほか、WO…

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