歌声よタリバンにも届け アフガンのマドンナ「これが私の戦い方」

有料会員記事アフガニスタン情勢

イスタンブール=高野裕介
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 イスラム主義勢力タリバンが権力を掌握したアフガニスタンで、女性の人権が脅かされている。同国の著名歌手で、「アフガニスタンのマドンナ」とも呼ばれるアリアナ・サイードさん(36)が朝日新聞の取材に応じ、自身の活動の意義やアフガニスタンの女性たちへの思いを語った。

 アリアナさんは、8歳のときに家族ととも内戦で荒廃したアフガニスタンから隣国パキスタンに逃れた。その後、スイスを経て英国で生活。10年前からアフガニスタンでも歌手などの活動を始め、英国やトルコ・イスタンブールを行き来していた。アフガニスタンでは、オーディション番組の審査員を務めたり、スポーツイベントで国歌を歌ったりするなど国民に人気が高い。インスタグラムのフォロアーは約144万人で、インフルエンサーとしても知られる。最近は首都カブールでファッションブランドを立ち上げ、約20人の女性を雇用したばかりだった。

 アリアナさんは8月15日に民間機で出国する予定だったが、同日にタリバンがカブールを制圧。空港は大混乱となり、銃声が鳴り響いた。これまでにタリバンに脅迫されることがあったというアリアナさんは、発見されれば拘束されると思い、空港から脱出。翌日、タリバンの目から逃れるために全身を覆う黒い衣服でめがねをかけて再び空港に向かい、米軍機で脱出した。その後、米国などを経由して現在はイスタンブールに滞在している。

恐怖と暗黒の中に取り残された

 ――タリバンが暫定政権を樹立し、アフガニスタンの統治を始めました。

 「最も恐れているのは、女性が自分たちだけで外出することすらできなかった、タリバン統治下の20年前に戻るのではないかということです。すでにタリバンは少女の教育を否定するなど、彼らが女性をどう扱おうとしているのかという兆候を見ることができます。子どもたちの基本的な権利を奪うなんて、絶対に受け入れることはできません」

 「私は音楽を通してアフガニスタンの女性の権利のために自分を捧げてきました。そして、アフガニスタンの女性はこの20年、政府職員や教師、医者として社会の重要な地位に就きました。これが突然、タリバンによって奪われてしまうのは本当にショックで、失望します」

 ――タリバンのもとで、今後のアフガニスタンはどのような社会になるのか、想像できますか。

 「タリバンが(20年前の統治下で)何をしたかを見ればわかります。アフガニスタンは世界から完全に隔絶され、死んだような国だった。人々は恐怖と暗黒の中で生き、私たち(の国の発展)は100年も取り残された。これがまさに、私が予期する今後のアフガニスタンの姿です」

 「私は脱出後も国内に取り残された多くの女性たちと連絡を取っています。彼女たちは打ちのめされ、恐怖のなかで生きている。将来が見えない状況なのです」

戦乱で最も苦しんだのは女性

 ――アフガニスタンの女性は何を求めているのでしょうか。

 「基本的な権利です。平和な国で、普通の人間としての生活を送りたい。この地球上のどこに、女性が働けず、学校に行けず、男性の同伴なしでは道を歩けない国があるのでしょうか。タリバンは女性からすべての権利を奪いながら、イスラム教をかたる。まったく信じられません」

 「サウジアラビアを見てください。イスラム教徒にとって、(2大聖地のある)サウジは特別な存在です。そのサウジですら今、女性が働き、勉強し、基本的な権利が許されるようになってきた。なぜアフガニスタンの女性は苦しまなくてはならないのでしょうか」

 ――あなたは自身の楽曲のなかで、「私は奴隷だ。なぜなら妻だから」「私は文化や伝統の恥」「私は信仰や宗教の汚点」などと歌っています。どういった思いからでしょうか。

 「私自身と、アフガニスタンの女性たちの境遇を歌っています。私はアフガニスタンにいると多くの脅迫や問題に直面しました。私は幼い頃に移住したので他に行く場所がありますが、アフガニスタンの女性たちに選択肢はない。そこで生きるしかないのです。長い戦乱で最も苦しんできたのは女性。この歌によって、アフガニスタンの女性たちの思いを、男性たちにも知ってもらおうとしました」

タリバンもこっそり聞いている

 ――アフガニスタンの多くの男性もあなたの曲を聴いていますね。

 「女性が歌手として活躍する…

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