さいはての芸術祭は未来を描くか 民具、廃駅が語る土地の記憶

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田中ゑれ奈
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 さいはての地に現代美術は根付くか。試金石となる2回目の奥能登国際芸術祭は、コロナ禍による1年延期を経て、制約の中で開幕した。住民とのプロジェクトが生んだ「劇場型民俗博物館」を中心に、土地の記憶を静かに語る作品がそろう。

 能登半島の先端、石川県珠洲市が舞台の芸術祭は、アートディレクター・北川フラムの指揮のもと2017年に初めて開かれた。第2回の開催にあたり、地域の家々の蔵や納屋に眠る生活用具を収集する「珠洲の大蔵ざらえ」を実施。市内約6千世帯のうち約70軒から、古い家具や漁具、日記や雑貨、祭り用品など1500点超が提供された。

 そうしてできたのが、海辺の高台に立つ廃校の体育館を丸ごと「モノの劇場」とした「スズ・シアター・ミュージアム『光の方舟(はこぶね)』」。南条嘉毅(よしたか)のインスタレーションを中心に、計8組の美術家が生活用具で構成した展示が、空間のあちこちに入れ子状に隠れている。

 壁沿いの棚や観覧席の下まで埋め尽くすモノたちは、民俗学の専門家の監修で、分類されタグを付けられている。劇場が同時に、珠洲の生活にまつわる文化を集め、研究・保存する博物館を兼ねるという趣向だ。会場では一日に数回、南条の演出で音楽と特殊照明を使ったプログラムが展開される。海底を思わせる青い光の中で、忘れられていたモノたちが息を吹き返し、幾世代もの人々の営みを語り始める。

 芸術祭では、地域に点在する空き家や使われなくなった施設に新たな顔が与えられた。カールステン・ニコライや陳思(チェンシー)、山本基(もとい)は、旧保育所を子供たちの気配漂うインスタレーションに作り替えた。四方謙一は、かつての子牛の競り小屋にステンレスの鏡面板をつるした。風に揺れる鏡が映す里山や空は、売られていく子牛が最後に見たであろう景色だ。

 05年に廃線になった、のと…

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