日産ゴーン元会長の元側近に懲役2年求刑 91億円の報酬隠した罪

主役なきゴーン法廷

金子和史
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 日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(67)が巨額の役員報酬を開示しなかったとされる事件で、金融商品取引法違反罪の共犯に問われた元代表取締役グレッグ・ケリー被告(65)に対する論告求刑の公判が29日、東京地裁であった。検察側は「開示制度の趣旨を逃れ続けた。悪質性が突出している」として、ケリー元役員に懲役2年を求刑。法人として起訴された日産には、罰金2億円を求刑した。

 ケリー元役員は一貫して無罪を主張している。裁判は弁護側の最終弁論が10月27日に行われて結審する見通しで、その後に判決が言い渡される。

 起訴状などによると、ケリー元役員は、2010~17年度のゴーン元会長の報酬は計約170億円だったが、有価証券報告書には各年度に支払った計約79億円のみを記載し、残りの約91億円は退任後に支払う「未払い報酬」にして開示を免れたとされる。

 20年9月に始まった公判で検察側は、1億円以上の報酬を得た役員とその報酬額を個別開示する制度が10年に導入されたのを機に、ゴーン元会長の高額報酬が公にならないよう、一部を開示を避けて受け取る方策が検討されたと主張した。

 具体的には、元秘書室長が未払い報酬の累積額を1円単位で管理するなどした「合意文書」を作成していたと指摘。そのうえで、ケリー元役員はその支払い方法を検討し、元会長が退任後に顧問料や競合他社に行かないことへの対価といった名目で支払う「契約書」に自ら署名していたなどと説明した。

ケリー元役員、無罪主張で真っ向対立

 一方、ケリー元役員は被告人質問で、「(元会長の報酬に)未払いがあったとは思っていない。虚偽の有価証券報告書を提出したことはない」と強調した。元会長が退任した後の処遇を記した契約書については「世界でベストな経営者の一人であるゴーンさんを、日産につなぎとめるためのものだった」とし、開示の必要のない「退任後の業務への支払い」だと語った。

 検察側と司法取引した元秘書室長は証人尋問で、合意文書について「ケリーさんには記載項目を相談し、ゴーンさんが署名した後の文書も見せた。ケリーさんは未払い報酬を認識していた」と証言した。契約書も「ケリーさんの指示で作成、修正した」と述べた。

 これに対し、ケリー元役員は、合意文書は「まったく見たことがない。(元秘書室長から)文書について聞いたこともない」、契約書の作成指示も「覚えていない」と反論した。

 19年末にレバノンに逃亡したゴーン元会長は国際手配されているが、身柄が日本に引き渡される見通しは立っていない。(金子和史)

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日産カルロス・ゴーン元会長をめぐる事件の裁判が始まった。法廷で明らかになるのは、カリスマ経営者の「犯罪」か、追放を企図した「陰謀」か――。[記事一覧へ]