だいすきノート 第6話
スキルス胃がんと診断された横浜市のみどりさんは、32歳だった2019年11月末、週に1度のペースで慶応大病院に通っていた。
通院は、みどりさんと夫のこうめいさん(37)が2人になれる機会でもあった。
抗がん剤の点滴が終わった後、病院の周りを2人で歩いた。神宮外苑まで足を伸ばすと、イチョウの葉が黄色く光っていた。
まだ遠出ができたので、車で山梨県まで出かけ、大学時代の友人と家族ぐるみで久しぶりに会った。
急に体調が悪くなったら、近くの病院に駆け込めるように、あらかじめ慶応大病院で紹介状を書いてもらった。
双子の娘こっちゃん、もっちゃんが通う幼稚園のお遊戯会もあった。みどりさんは2人の着替えを手伝った後、「ドラミちゃん」のテーマ曲に合わせて踊るのを見た。
見に来た母えつこさん(60)とこうめいさんは、「このまま元気でいられる時間が続くといいですね」と話した。
だが、病気は確実に進行していた。切り替えた抗がん剤も、効果に限界があった。
聞けなかった気持ち
看護師長の近藤咲子さん(65)の目には、みどりさんの調子が徐々に落ちているように見えた。
「もう、あまり時間がないか…