第6回「時間ない」看護師長が渡しただいすきノート ママは書かなかった

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編集委員・田村建二
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抗がん剤治療の後、慶応大病院の周りを夫婦2人で歩いた=2019年12月5日、家族提供
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だいすきノート 第6話

 スキルス胃がんと診断された横浜市のみどりさんは、32歳だった2019年11月末、週に1度のペースで慶応大病院に通っていた。

 通院は、みどりさんと夫のこうめいさん(37)が2人になれる機会でもあった。

 抗がん剤の点滴が終わった後、病院の周りを2人で歩いた。神宮外苑まで足を伸ばすと、イチョウの葉が黄色く光っていた。

 まだ遠出ができたので、車で山梨県まで出かけ、大学時代の友人と家族ぐるみで久しぶりに会った。

 急に体調が悪くなったら、近くの病院に駆け込めるように、あらかじめ慶応大病院で紹介状を書いてもらった。

 双子の娘こっちゃん、もっちゃんが通う幼稚園のお遊戯会もあった。みどりさんは2人の着替えを手伝った後、「ドラミちゃん」のテーマ曲に合わせて踊るのを見た。

写真・図版
幼稚園が開いたお遊戯会の本番前に、2人の着替えを手伝った=2019年12月10日、家族提供

 見に来た母えつこさん(60)とこうめいさんは、「このまま元気でいられる時間が続くといいですね」と話した。

 だが、病気は確実に進行していた。切り替えた抗がん剤も、効果に限界があった。

聞けなかった気持ち

 看護師長の近藤咲子さん(65)の目には、みどりさんの調子が徐々に落ちているように見えた。

 「もう、あまり時間がないか…

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