祈りの連鎖を広島から 広響音楽総監督、下野竜也の出した答えは

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編集委員・吉田純子
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 原爆の惨禍を直接知る人がいなくなった未来に、被爆者たちの祈りをどう伝えてゆくべきか。広島交響楽団(広響)の音楽総監督、下野竜也は2017年の就任時から自問し続け、5年の任期最後のシーズン、広島市で8月5日に開かれた「平和の夕べ」コンサートで一つの答えを出した。

 「ひとりひとりの受け取り方が違うのって、素敵なことだと思うんです。最初から『祈ろう』と身構えるのではなく、力を抜いて『いい曲だね』と互いにうなずきあうことを、寛容な社会を築く一歩にできたらいいなと思ったんです」

 昨年の「平和の夕べ」では、被爆ピアノを念頭に作曲された藤倉大の新作を、広島出身のピアニスト萩原麻未が世界初演した。しかし今回、下野は被爆をテーマにした楽曲は採り上げず、それぞれに異なる祈りが託された大好きな五つの曲を、一つの物語として聴かせることに決めた。公演は無観客で配信された。

 幕開けは、バロック時代の作…

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