前川清さん、いま語る「東京砂漠」 カラオケで歌う心得とは?

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聞き手・寺下真理加
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 東京オリンピックパラリンピックが終了した今、あなたが好きな、題名に「東京」がつく歌は? 朝日新聞土曜beで毎週、実施している読者アンケートで9月上旬、そんなテーマで調査したところ、1位に輝いたのは、内山田洋とクール・ファイブが1976年に発表した「東京砂漠」でした。ソロになってからもこの歌を歌い続ける前川清さんに、歌声に込めてきた東京という街への思いをうかがいました。

 ――前川さんは長崎のご出身ですが、東京という街をどんな風に感じてきましたか。

 たとえば僕のように、地方から東京に出てきた人もいれば、しばらく東京で暮らして、また地方に帰る人もいますし、東京で生まれ育ったという人もいます。ありがたいことに、そういう違いを抜きにして、「東京砂漠」は色んな人に支持されてきた歌なんですよね。

東京にも「あなた」の温かさが

 東京は、冷たい街、人と人とのつながりがない、会話もない、隣が何をする人かもわからない街――。私が九州から東京へ来た頃、そんな風に言われていたし、実際にそう感じる部分もありましたね。でも一方で、九州みたいな地方に暮らしていると、もちろんすごく人間は温かいんだけど、ちょっと温かいを通り越して、うるさいかな、なんてところもあるんですよ。近所付き合いみたいなものが。だって、隣の家のケンカのことまで知っているんだから。

 だから、東京の魅力というのは、便利さはもちろん、そういうしがらみのなさ、自由であることの良さなのかも知れないですね。でも、「ひとはやさしさをどこに棄ててきたの」と歌っておきながら、サビではちゃんと「あなたがいれば」と歌う。東京にも「あなた」がいることの温かさが、あるんですよ。

 ――前川さんご自身もこの曲に共感しつつ歌っていらっしゃるのでしょうか。

 本当に「好き」と思いながら歌っている曲というのは、必ずしも多くないんです。指を折って数えるほどでしょうか。でも「東京砂漠」は間違いなく、そのうちの1曲。不思議と歌うことで心が落ち着く。素直に「いい歌だな」と思いながら歌うことができる。たとえば「中の島ブルース」などは少し違って、素の僕が好きかどうかは、脇において歌うようなところがありますよね。

 クラシックやジャズが好きというような方にも、「私は演歌はあまり得意じゃないけれど、『東京砂漠』は、クール・ファイブは好きなんだ」という方が時折いらっしゃるのですが、クール・ファイブは、もともとジャズをやっていたので、ハーモニーにしても、音の並べ方にしても、ど真ん中の演歌と違うところがあるんです。おそらくはそれが「東京砂漠」という歌のしゃれた部分に生きていて、「演歌っぽく聞こえない歌」なんて言われる理由なのかも知れません。ジャズの渡辺香津美さんと共演させてもらった時は、渡辺さんのギターで、自分自身も知らない「東京砂漠」を引き出してもらった気がして、面白い体験でした。型にはまらない、崩していく歌い方が意外と好きなのかも知れない。

 ――クール・ファイブ時代と、ソロの今と、歌い方に違いがあるのでしょうか。

 今と昔を比べるなら、若い頃…

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