「早くやめておけば」あえぐ組員、強まる排除 「暴排」条例の10年

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 社会と暴力団との関係を断つことをめざす暴力団排除(暴排)条例が47都道府県にそろって10月で10年になる。暴力団への包囲網は確実に強まり、組員・準構成員はこの10年で3分の1に減った。ただ、暴力団の活動が止まったわけではなく、組を離れた人たちの受け皿作りも課題だ。

 条例は2009年7月に佐賀県が、不動産業者に暴力団事務所開設防止への努力義務を課す条例を施行したのが最初だ。暴力団抗争が相次いだ福岡県は10年4月、暴力団に利益供与した事業者への罰則を初めて盛り込んだ条例を施行した。11年10月1日に東京、沖縄で施行され、47都道府県に広がった。

 暴力団対策法(1992年施行)が暴力団から市民への不当な要求を主に禁じるのに対し、暴排条例は市民から暴力団への利益供与を禁じているのが特色だ。飲食店が払う「みかじめ料」や、暴力団の会合場所や駐車場の提供、組の名前が入った名刺の印刷など対象は幅広い。金品や施設の提供を断ち、暴力団を封じ込めることをねらった。

 違反行為には都道府県公安委員会が勧告や中止命令などを出す。従わなければ会社名を公表されたり、検挙されて懲役や罰金を科されたりする可能性もある。

 警察庁によると、条例に基づく勧告や中止命令などは11~20年に全国で計865件あった。20年は106件で過去最多を更新し、うち検挙が33件を占めた。

 規制をさらに強める動きも。大阪府は、現在は学校などの周囲で禁じている暴力団事務所の新設を、都市計画法上の工業専用地域以外で認めないとする条例改正を予定する。府内のほぼ半分の地域が対象になる。

 大阪ガスは10月の約款改定で、暴力団などが契約の名義人だった場合は解約対象にする条項を設けた。

 山口組系組織の幹部は「暴排条例で潮目が変わった」と話す。

 20年ほど前までは、繁華街の風俗店や高級クラブなどでのトラブル処理にあたる代わり、各店から月20万~30万円のみかじめ料や用心棒代をとっていた。「酔って暴れる客がいる」と店から電話があればすぐに駆けつけたという。

 条例が広がって以降は店からの依頼は減り、収入も少なくなった。「飯が食えない」と足を洗う組員が増えたという。幹部は「男気だけでは食べていけない。生きづらい社会になった」。

 警察庁によると、暴力団組員・準構成員は10年の7万8600人から20年は2万5900人に減少した。

 ただ、捜査現場では、暴力団の活動実態が見えにくくなったとの声もある。ある警察幹部によると、組事務所を捜索しても、組員の名札など、組織の全容を示すような資料は置いていないのが普通だという。幹部は「実際の組員らの数は警察が把握しているより多いはずだ」と漏らす。

 暴力団を離れる決意をした人たちの社会復帰も大きな問題だ。警察庁によると、11~20年、警察や暴力追放運動推進センターの支援で計約5900人が組を離脱したが、暴追センターなどがつくる「社会復帰対策協議会」を通じて就労できたのは約210人(3・5%)にとどまる。

 大阪府の暴追センターでは11年4月の府暴排条例施行以来、元組員に対して5件の就労支援をした。せっかく受け入れ先が決まっても、就労初日から出勤しなかったり、1日出勤しただけで連絡が途絶えたりしたことがあったという。担当者は「一般社会のルールになじんで就労を継続することには難しさがある」と話した。

「もっと早く気づけば」 50代で離脱の元組員語る悔恨

 暴力団への市民からの利益供与を禁じる暴力団排除条例が47都道府県で施行され、10月で10年になった。規制強化で暴力団の伝統的な資金源が封じ込められ、摘発も続くなかで、組を離脱する組員が相次いでいるという。なぜ長年のヤクザ生活から足を洗おうと決意したのか。「堅気」になった今の暮らしはどうか。2月に刑務所から出所し、建設作業員として働く兵庫県の元組員(54)が朝日新聞の取材に語った。

10代で暴力団に入り、月70万円をもらっていたこともある男性はなぜいま「足を洗った」のか。父の決断を聞いた娘の受け止めは。

 7回目の懲役刑を終え、2月…

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