自民党の岸田文雄・新総裁が、新たな党執行部の布陣を固めた。党運営の要である幹事長には、安倍晋三前首相に近い甘利明税調会長を起用。党三役に若手議員を登用するなど「改革」をアピールする狙いものぞくが、「安倍カラー」がにじむ人事配置となった。
総裁選から一夜明けた30日午前、岸田氏は記者団に党役員らの人事を急ぐ考えを言葉少なに語った。
「日程もかなり窮屈な状況ですので、大変めまぐるしく活動を始めている」
本来なら総裁決定後の翌日には党役員人事を決めるのが通例で、党側も30日に党四役による記者会見を開く準備を進めていた。ところが、幅広い党内の派閥から支援を得た岸田氏は29日に初めて開いた総裁会見で「人事については早急にたたき台を作り、しっかりと確認をしていきたい」と述べるにとどめ、調整が難航している様子をうかがわせた。
岸田氏の姿勢には自身が率いる岸田派内からも「優柔不断ぶりが出ている。時間がたつほどいろんなことを言ってくる人が増える」と不満の声が漏れるほどだった。
その岸田氏が、早々に内定したのが幹事長ポストに甘利氏を起用することだった。
甘利氏は安倍氏や、自身が所属する派閥会長の麻生太郎副総理兼財務相と親しく、3氏の頭文字をとって「3A」とも称される。総裁選では、岸田氏陣営の顧問に就任。高市早苗前総務相を全面支援する安倍氏と、麻生氏の連絡役を果たし、岸田氏の勝利に貢献した。
岸田氏にとっては、党内最大派閥の細田派に影響力のある安倍氏と、第2派閥の領袖(りょうしゅう)である麻生氏とそれぞれつながりの太い甘利氏の存在は大きい。複数の関係者によると、甘利氏は幹事長就任に意欲を示していたといい、岸田氏は総裁選後すぐに起用に向けて最終調整に入ったという。
甘利氏はさっそく30日午前、国会内で麻生氏と会談した。岸田氏が検討する政権構想などを麻生氏に伝達。この会談で人事などについて大枠で一致したという。午後には、党本部で岸田氏と改めて面会。その後、新たな役員人事について、政調会長に決まった高市氏らに、岸田氏ではなく、甘利氏が電話を次々にかけ、早くも「新幹事長」として振る舞った。
ただ、党内には甘利氏の重用ぶりに不満の声も漏れる。
第1次安倍政権で経済産業相…
- 【視点】
「安倍なき安倍政権」という印象です。党内の有力者の意見を聞く岸田氏の特技が発揮された、優柔不断な人事そのものが「岸田カラー」なのかもしれませんが。 安倍カラーを抑えるよう萩生田氏の官房長官を見送り、松野氏を充てることにしたとされますが、