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ALS進行、白血病の薬で食い止める iPS創薬の治験で世界初

野中良祐
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 体が徐々に動かなくなっていく難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」について、京都大などのチームは30日、iPS細胞を使って見つけた治療薬候補の「ボスチニブ」を飲んでもらう治験の結果、一部の患者で進行を止められた可能性があると発表した。ALSの進行を食い止めた例は世界初とみられる。

 チームの井上治久・京大iPS細胞研究所教授(神経内科)は「まだ少人数での結果」とした上で、「科学の力で(ALSを)制圧できることが視野に入った」と話す。ただ、今回の治験は安全性を確かめるのが主な目的で、少人数のため、効果があったかどうか統計的な判定はできない。今後、規模の大きい治験を計画する。

 ALSは筋力が低下し、進行すると呼吸ができなくなる。国内の患者は約9千人とされ、進行を遅らせる対症療法の薬はあるが、根本的な治療薬はない。井上教授らは、患者の皮膚からiPS細胞をつくって病気の細胞を再現。既に別の病気で使われている薬などから効果があるものを調べ、白血病治療薬の「ボスチニブ」が有望だと絞り込んだ。

 今回の治験は、ALSを発症してから早期で、一定のペースで進行していくことを確認できた患者を対象とした。1日100~300ミリグラムのボスチニブを12週間飲んだ患者9人のうち、5人は病気の進行が止まった。井上教授は「通常ではみられない現象が起きた」と説明する。9人のうち、残りの4人は進行のペースが変わらなかった。

 薬を飲む前の血液を調べたところ、進行が止まった5人は、止まらなかった4人と比べて神経細胞が壊れた時に出るたんぱく質の量が少ないこともわかった。薬が効きそうかどうかの指標になり得るという。

 ボスチニブは、白血病には最大1日600ミリグラムまで使うことができる。今回、1日400ミリグラムを飲んだ患者では肝機能障害がみられたため、服用を中断した。白血病治療でもみられる副作用で、チームは今後の大規模な治験では、期待できる効果とのバランスを慎重に検討し、服用量や患者の対象基準などを計画する。

 今回の治験の結果は10月3日から開催される「第25回世界神経学会議」でオンライン発表される。野中良祐