鳩サブレーの缶から奪われた「幸せな人生」 お金で計れない価値は
角詠之
3月の平日の朝、東京都調布市に1人で暮らす女性(87)宅の電話が鳴った。「宅配業者」を名乗る男は言った。「道が狭くてトラックが通れない。荷物を取りに来てほしい」
確かに、家の周りには細い路地がある。女性は疑うことなく家を出た。だが、それは「わな」だった。
「おっちょこちょいで早のみこみな性格なものですから、『取りに行きます』と言ってしまったんです」
待ち合わせ場所は、紳士服店とスーパーの間。自転車で急いだが、業者はいなかった。
「新しくできたコンビニの方と間違えたかな」
40~50分ほど周辺を回ったが、結局会えなかった。諦めて家に戻ると、すぐに異変に気づいた。
50年近く住む家の中が何か…