山形の酒を石垣島で海外営業 テレワークで変わる転職スタイル

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松浦新、編集委員・沢路毅彦
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 会社と働く人の関係を変えつつあるテレワーク。その影響は、即戦力を求める転職市場にも及んでいます。オンライン面接だけで採用されたり、引っ越さなくても遠くの企業に勤められたり。人を集めたい企業も工夫を迫られます。松浦新、編集委員・沢路毅彦)

優秀な人材集まる効果も

 江戸末期の創業で、180年を超す歴史がある日本酒メーカー「楯(たて)の川酒造」の本社は、山形県酒田市にある。でも、広報を担当する高梨杏奈さん(32)の職場は横浜市内の自宅だ。本社を訪れたことはない。

 今年6月、IT企業から転職した。

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山形県酒田市のメーカーに転職した高梨杏奈さん。自宅リビングルームの一角が仕事場だ=横浜市内

 IT会社ではもっぱら社内広報を担当。「消費者の反響が直接感じられる仕事がしたい」と考え、消費者向けの商品を扱う企業への転職をめざした。楯の川酒造を知ったのは人材系サービスのSNSから。「海外展開に積極的で、スピーディーに動いている」と興味を抱いた。

 上司になる部長や社長との面接はすべてオンラインだった。「コロナでZoomを使うことにすっかり慣れた。実際に会社に行くのは大変。日程の調整もしやすい」。入社後も社長とは実際に会ったことはない。

 楯の川酒造では、もともとテレワークで働く社員が多い。全社員約60人のうち、12人は全く出社せず、テレワークをしている。

 沖縄・石垣島で海外営業を担当する社員もその1人。もともと本人の希望で石垣島に拠点を置いていた。中国本土や台湾など主要な売り込み先へのアクセスが便利で、経費削減にもなった。コロナ禍でも石垣島からオンラインで営業活動を続けている。

 テレワークの先駆けは東京の営業担当者たちだった。以前は東京に営業拠点の事務所があった。しかし、営業担当は酒屋や飲食店を回るのが仕事。ほとんど事務所にいないため、経費削減のために思い切って事務所を廃止。全面的にテレワークに移行した。

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山形県酒田市にある「楯の川酒造」の蔵=同社提供

 今年2月から広報課長の北山幸輝さん(29)もその1人だった。新卒で楯の川酒造に入社。最初は蔵で働き、その後、東京で営業を担当した。広報課長になった今も神奈川県内に住む。

 働く場所が自由になったことで、「優秀な人材を集められるようになった」と北山さんはいう。上場を目指すために投資家向け広報担当も採用したが、これらの人材もテレワークで働いている。

 「山形に行かなくても仕事が成り立つ」という高梨さんは課題も挙げる。「山形と東京では感覚の違いがある。『製造会社とIT会社』みたいに分断が起きてはいけない。コミュニケーションが円滑にとれるように、社内広報を充実させることも考えていきたい」

記事の後半では、オンライン転職のおかげで家族が離ればなれにならず配偶者もキャリアアップを果たしたという方のケース、コロナ禍でテレワークに目覚めて副業だった先に転職したという方のケースをご紹介します。

■「何も不自由は感じない」…

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