国立大生の自殺率が過去6年で最多 コロナ禍「困っていれば相談を」

新型コロナウイルス

小若理恵
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大学生に相談を呼びかける動画をつくったキャンパスソーシャルワークネットワークの米村美奈代表=動画から
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 国立大学の学部生の自殺率が2020年度、過去6年の調査で最多となった。新型コロナウイルスの感染の広がりが関係した可能性があるという。学生の相談にあたるキャンパスソーシャルワーカー(CSW)らが動画メッセージをつくり、「あなたらしく生活できるように応援したい」と、相談を呼びかけている。

 一般社団法人「国立大学保健管理施設協議会・メンタルヘルス委員会」の調査によると、昨年度は国立大学82校の学部生43万3032人のうち76人(男性58人、女性18人)が自殺、または自殺とみられる死因で亡くなった。自殺率では学生10万人あたり17・6人(男性21・2人、女性11・3人)で、過去6年で最多となった。

 調査と分析にあたった茨城大保健管理センター所長の布施泰子教授(精神医学)は、「オンライン授業が導入され友人と交流する機会が減ったことや、アルバイトがなくなって経済的に困窮するなど自殺のリスクを高める要因が重なった」と指摘する。過去にもリーマン・ショックで不況が広がった08年度、学生の自殺率が10万人あたり21・3人と深刻化したことがあったという。

困ったことがあったら相談を

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大学生に相談を呼びかける動画をつくったキャンパスソーシャルワークネットワークの中澤未美子・山形大准教授=動画から

 悩みを抱える学生を救おうと、全国60校の公私立大で学生支援にあたる精神保健福祉士社会福祉士ら83人でつくる任意団体「キャンパスソーシャルワークネットワーク」(代表=米村美奈・淑徳大教授)は今年6月、約2分の動画メッセージを作成し、ホームページで公開。5人のCSWが「生活費や奨学金、アルバイトなど経済的なことで悩んでいませんか」「研究に集中できないなど学業のことでお困りのことはありませんか」などと呼びかける。

 米村教授によると、関東のある大学では学生が自殺未遂をし、救急搬送先の病院からCSWに連絡があった事例があったという。学生は親から虐待を受けて育ち、一人暮らしをするために大学に進学。仕送りがなくアルバイトで学費と生活費を稼いでいたが、コロナ禍でシフトを減らされ生活に困窮していた。CSWは困窮学生に必要な支援策を検討し、フードバンクを通じて食料を届けたり、休まず通学できているかを継続的に見守ったりしている。

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悩みを抱えた学生の相談にあたる山形大准教授の中澤未美子さん=本人提供

 団体メンバーの中澤未美子・山形大准教授(社会福祉学)によると、同大学では自宅に引きこもり、外出できなくなってしまった学生をCSWが訪問し、定期的な相談によって回復できたケースがあったという。孤立を防ぐため、大学院生が家庭教師役となって勉強を教える仕組みも新たに設けたという。

 米村教授は「経済的な不安などカウンセリングだけでは解決できない問題も、学生と一緒に支援策を考えたい。親や友人に知られたくないことも一人で悩まずCSWに相談してほしい」と話す。(小若理恵)

家族との関係に悩みも

 自宅で過ごす時間が長くなり、親や家族との関係に悩む学生も増えている。京都精華大・学生支援センターの宮江真矢さんは「親の過干渉や暴力、家庭内不和などこれまでも同様の悩みはあったが、コロナで際立っている」と指摘する。

 「自宅以外に居場所が必要」と求める大学生ら若者の声を受け、宮江さんが運営に協力する京都市ユースサービス協会は8、9月の毎週火曜午後6時~11時、若者が立ち寄れる居場所「IND●(Eに´〈鋭アクセント〉付き)PENDANTS for youth」を試験的に開設した。家に帰りたくないときや、一人になりたくないときなどに利用できる。本格的な運営を模索している。

 宮江さんは「何に困っているのか言葉にできず、相談の仕方がわからない若者が多くいる。一言でいいからヘルプを発してほしい」と呼びかけている。

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