内定5社全部に「御社に入社します!」 嘆く人事「もう胃が痛い」

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石山英明
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 多くの企業が10月1日、来春入社予定の学生らを迎えて内定式を催しました。オンライン選考、オンライン内定式の広がりは便利な一方、疑心暗鬼を増幅させる面も否めません。内定辞退が出ないだろうか。企業の採用担当者の落ち着かない日々が続きそうです。

 企業からもらった内定は五つ。都内の有名私立大を来春に卒業予定の男性(23)は、すべての企業にこう返事した。

 「御社が第一志望です! 御社に入社させていただきます!」

 就活は「情より合理性」の世界だ。多くの企業は、そっけないメール1通で選考に落ちたことを知らせてくる。ならばこっちだって考えがあるぞ。申し訳ないけれど、内定をもらったらいけるところまでひっぱってやる――。そんな気持ちで就活をしてきた。

 内定をくれた企業は、定期的な面談、課題の提出などを求めてきた。接点を保ち、学生が離れないようにする狙いだ。さすがに5社全部に対応するのは時間的に厳しく、5社のうち3社には内定の辞退をほぼ同じ文面でメールした。採用担当者はあわてた様子で電話をかけてきた。

 残るは2社。年収の高い人材関係の大手企業なら安定した生活を送れそうだ。でももう1社のITベンチャーで自分の市場価値を高め一獲千金を狙うのも魅力的だ。迷っているうちに、気づけば10月1日の内定式が数日後に迫っていた。

 「どっちに行けば人生の成功なのか決めきれない。そもそも片方の企業はずっとオンライン選考で、会社に行ったことすらないし」

 学生の真意を確かめる「踏み絵」と呼ばれる内定式。この学生は10月1日の内定式にどのような結論を出したのでしょうか。記事後半では、就活のオンライン選考が進んだことで内定式の踏み絵としての価値も薄れてきた現状、嘆く企業の担当者の姿を紹介します。

 オンライン選考だけで内定を…

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    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2021年10月4日9時47分 投稿
    【視点】

    ぼくのかんがるさいきょうのしゃせつ ■内定は「もらう」な  さすがの石山英明クオリティである。数々の部署を渡り歩き、経済部に帰ってきた彼の、仕事の充実感が光っている。希望通りの異動ではないケースもあっただろう。しかし、今の彼は「よかった

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    磯野真穂
    (人類学者=文化人類学・医療人類学)
    2021年10月4日16時43分 投稿
    【視点】

    【就活の身体性について】  大学教員をしていた頃、企業がところ構わず(私にはそのように見えたということであるが)内定学生を呼び出すことに辟易していた。学生は、内定式、研修、懇親会と当然のように授業やゼミを欠席し、それに対し、配慮をして