教員の「定額働かせ放題」に司法から異例の苦言 見直しに前進?

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 「教育現場の勤務環境の改善が図られることを切に望む」。教員の残業代を巡る訴訟で、さいたま地裁の1日の判決は異例の付言をした。原告や支援者だけでなく、全国の現職教員が注目した裁判。関係者はこれを機に「定額働かせ放題」とも指摘される現行の給与や働き方を巡る制度が変わることを望んでいる。

「やりがい搾取に歯止めを」 現職教員の期待

 「とてもありがたい。今後、制度の見直しにつながってくれれば」。神奈川県の公立小の50代女性教諭は、判決が、現行の給与や働き方を巡る制度について「もはや教育現場の実情に適合していない」と指摘したことについてそう話した。

 公立教員の給与は、1971年制定の教職員給与特措法(給特法)で規定されている。夏休みなどの長期休業中は働き方が異なるなど教員の勤務の特殊性を踏まえ、残業代を支払わない代わりに月給4%分を一律支給することが決められている。女性はこの制度が教員の忙しさを助長してきたと考えている。

 教員になって20年ほど。以前は夜8時以降まで学校に残り、土日も出勤するのが当たり前だった。2年前に文部科学省が残業時間の上限を盛り込んだ指針を出した際、制度について調べたのを機に給特法の問題点に気付いたという。なるべく定時退勤するようにし、家庭で中高生の子どもとの時間をより多くとるようになった。「子どもをちゃんと見てあげていなかった。若手教員のためにも、定時に帰ることで職場を変えたいと思った」と話す。

 教員の業務が近年、際限なく増えてきたのは、行政や管理職にとって残業代を出さずに済むことが一因だと感じる。「本来は仕事を増やせば人か手当を増やさなければならないはずなのに、教員が都合良く使われてきた」と指摘する。

 教員の長時間労働が社会問題化したことで、パソコン上で教員間の連絡事項を共有して会議を減らすなど、職場は少しずつ改善していると感じる。ただ、人手不足は解消されず、若者からも選ばれなくなっている。「給特法を変えて、教員のやりがい搾取に歯止めをかけてもらいたい。それまでは残業しないという方法で戦い続けたい」と話した。

 愛知県一宮市の小学校教諭、加藤豊裕さん(43)は、判決が教員の業務削減や「勤務実態に即した適正給与の支給」のため、早急な対応が望まれると言及したことについて、「こうした司法の声が示されたことには、大きな意義がある。立法府や行政は真摯(しんし)に受け止めてほしい」と話す。

 今年6月と8月に文科省を訪問。長時間労働の窮状を訴える教員の声を書き込んだ「教師からのバトン」を届け、改善を訴えた。文科省が3月にSNSで始めた「#教師のバトン」プロジェクトに、教員の魅力を発信するという意図とは逆に、批判の声が相次いだことを受けた行動だった。

 法や制度が変わるまでには一定の時間がかかるとみる。加藤さんは「教員は子どものために滅私奉公するのが当然だ、と周囲も教員自身も思いがちだが、労働者としての権利や人権がもっと重んじられるべきだ」と指摘。定時出勤、定時退勤をして、こなしきれない業務がどれだけあるかを可視化し、業務の精選につなげるなど「それぞれの職場で教員が声を上げていくことも必要だ」と話した。

原告側は「画期的」「一刻も早く改善を」

 判決が教員の給与や働き方を改善するよう求めたことなどを受け、さいたま地裁前では1日、支援者らが「画期的な判決」などと書かれた紙を掲げた。原告代理人の若生直樹弁護士は取材に「これまでの裁判例と比べてもかなり踏み込んだ判断だ」と評価した。

 一方、判決後、東京・霞が関

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