観光客消えたサクランボ園、ピンチ一転 ふるさと納税の出荷5倍超
ふるさと納税を使った自治体への寄付が昨年度、東北各地で大幅に増えた。新型コロナウイルスの影響で「巣ごもり消費」が広がり、返礼品を求めて寄付する人が増えたためとみられる。コロナ禍で需要が落ち込んだ特産品を返礼品にして、人気を集めた自治体もあった。
ふるさと納税は、ある自治体の住民が居住地以外の自治体に寄付すると、2千円を超える部分は、居住地の自治体に払う住民税などから控除される。
総務省が公表した昨年度のふるさと納税の受け入れ額によると、福島県が県内の自治体合計で前年度より88%増えるなど、東北6県は3~8割台の増加幅となった。中でも山形県寒河江市は、約3割増で東北最多の56億7600万円を集め、全国7位になった。
寒河江市の人気を支えた返礼品の一つが、サクランボだ。
同市はサクランボの一大産地で、毎年6~7月、多くの観光客がサクランボ狩りに訪れる。だが昨年は4月に国が新型コロナ対応の緊急事態宣言を出すなど感染拡大に不安が高まり、生産者らはサクランボ狩りを中止せざるを得なかった。
同市で「大泉観光さくらんぼ園」を営む大泉圭司さん(52)も、初めて中止した。例年なら1千人以上訪れる客がゼロになってしまい、「どうしたらいいのか」と戸惑った。
サクランボ園の運営者らでつくる組合や農協は、ふるさと納税の返礼品に活用できないか市に相談した。そこで、市が寄付を募るウェブサイトに緊急支援品として載せると、コメや酒などとともに人気が出て、多くの寄付が集まった。
大泉さんが昨年度、ふるさと納税向けに出荷したサクランボは約1800箱。例年の5倍以上にのぼったという。大泉さんは「かなり売り上げが減っていたはずで、本当に助かった。園に来られなかった人にも、寒河江の特産を味わってもらえた」と振り返る。
宮城県角田市も、前年度より6割以上増えて27億700万円となり、県内で最多だった。人気を支えるのは、地元に拠点を置くアイリスオーヤマの家電製品だ。
市の担当者は「コロナ禍での巣ごもり需要とマッチした面がある」。人口減少が進む中、貴重な財源となっており、市は寄付を募るサイトの種類を増やす検討をしている。
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