破綻した投資会社の被害「仮想コインでゼロに」 勧誘の会社代表起訴

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 国に無登録のまま暗号資産(仮想通貨)を販売したとして、東京の会社代表が9月、資金決済法違反の罪で起訴された。この会社が運営していた暗号資産の保有者の多くは別の投資詐欺事件の被害に遭っており、「被害をゼロにする」と勧められていたという。会社側は「暗号資産を現金化できるよう準備は進めているが、具体的なめどは立たない」としており、「二重の被害になるのでは」との不安の声も出ている。

 この暗号資産はワールドフレンドシップコイン(WFC)。東京地検は9月29日、都内の運営会社代表だった紙屋道雄(かみやみちお)被告(71)を起訴した。同8日に警視庁に逮捕された際、「営業担当が勝手に販売した。私は知りません」と容疑を否認していたという。

 捜査関係者らによると、WFCの保有者の多くは、愛知、岡山両県警に2019年に詐欺容疑で実質的経営者が逮捕された投資会社テキシアジャパンホールディングス(千葉市)の出資者だった。

 テキシア社は高額配当をうたい、約1万3千人から約460億円を集めたとされるが、16年夏には債務超過に陥り、その後経営破綻(はたん)した。実質的経営者は今年6月に名古屋地裁で懲役8年の判決を受けた。

 紙屋被告らは17年ごろから各地でテキシア社の出資者ら向けの講演を開き、「コインで負債がなくせる」と暗号資産への切り替えや購入を呼びかけていたという。

画面では「億」単位 でも現金化できず

 テキシア社に200万円を出資していた中国地方の60代男性は2018年ごろに紙屋被告らの勧めで、WFCの暗号資産に切り替えた。その後、紙屋被告が会長を務める別の会社が運営するコインに置き換えられ、現在は利息扱いとして贈呈されたコインも含めて2万枚以上を保有している。

 この会社サイトでは今、後継コイン1枚が20万円前後の価値があると表示される。「定期預金」扱い以外の約2200枚だけで約4億円になるはずだが、現金化はできないままだ。

 紙屋被告は講演で後継コインについて「アフリカで採掘したダイヤモンドが担保にある」と安全性を強調していたという。男性は「半信半疑のところはあるが、被害者救済の根幹が偽りではないと信じたい」。

 広島市の会社役員の50代男性は1千枚以上のコインを保有する。サイトでは約2億円相当と表示されるが、「現実味がない。これが本当なら賭け事をする人なんておらんよ」。

 男性も何度か紙屋被告の講演を聞いた。億単位でもうけた人もいるとアピールしたうえで、「1枚3万円で買える期間はあと少し」と強調し、追加購入を呼びかけていた。

 ある講演会では司会者が「きょう来た皆さんはラッキー。2コインがプレゼントされます」と話し、紙屋被告をたたえる拍手を促したという。男性は「1枚3万円で購入を呼びかけながら、無料で配るなんておかしい」と感じたという。

 コインの現金化や買い物時の決済にはプリペイドカードが必要といわれ、この夏に2万2千円を支払った。だが現金化のめどは立たないままだ。男性は「購入したコインはこのまま現金化できないのか。実際に価値がないのかを説明してほしい」と話す。

 紙屋被告が代表を務めるWFC運営会社のサイトは、昨年5月にホームページ刷新の告知が出て以降、更新が止まった。サイトに出ている電話番号にかけると呼び出し音が鳴るが、誰も出ないことが多いという。法人登記の住所は東京都渋谷区だが、サイトの表記は東京都港区。後継コインの運営会社もサイトでは同じビルにあることになっている。

相談急増、「必ずもうかる」にご用心

 暗号資産をめぐる相談は急増している。国民生活センターが統計を取り始めた2014年度に受けた相談は18年度に3千件を超え、昨年度は3342件。「現金化できない」「運営会社と連絡がつかない」「会員サイトに入れない」「無登録業者から買ってしまった」といったトラブルがめだつという。

 センターによると、統計開始からこれまで相談対象になった暗号資産の契約者は、男性は20代が最も多くのべ1730人、40代の1379人が続く。女性は50代が最多で1295人だった。

 関西の20代男性は今夏、出会い系アプリで知り合った女性に暗号資産の購入を勧められ、100万円を支払った。その後、指定された業者が無登録とわかり、女性との連絡も途絶えた。業者に問い合わせても返事がないという。

 関西の70代男性は今春、20万円を投資し、AIが選んだ暗号資産などが100万円以上に増えたとの連絡を受けた。現金化を希望したところ、手数料を求められて約7万円を払ったが、業者と連絡がつかなくなったという。

 相談は今年度も9月までで2千件近い。国民生活センターの担当者は「リスクが伴うことを理解し、『今がお得』『必ずもうかる』という誘いにつられないでほしい。金融庁サイトに登録がある業者であるかをしっかり確かめ、きちんと連絡が取れるかも注意してほしい」と話す。

無登録で販売されていたという暗号資産に果たして価値があるのか。運営会社の元幹部が取材に応じました。

 WFC運営会社元幹部で、現在は後継コイン運営会社の幹部が9月末、朝日新聞の取材に応じた。

 ――なぜ無登録で仮想通貨を販売したのか。

 個人間のコイン売買を仲介するシステムを管理していただけで、取引所として交換業をしているつもりはない。国への登録が必要とは思っていなかった。金融庁のアンケートに答えて実態を説明しており、間違いがあるなら指導を受けるだろうと考えていた。

 ――WFCもそうだったが、後継のコインも現金化できない状態だ。

 一部の契約店で後継コインは買い物に使える。現金化できる準備も進めている。

 ――サイトでは1コインが約20万円。しかし、現金化はもちろん、他の暗号資産との交換もできない。

 他の暗号資産の相場と連動させている。今は「絵に描いた餅」だが、保有状況を示すシステムは必要だし、イメージしやすくしている。表示された日本円でコインを売れるというわけではない。これは購入者に説明している。

 ――警視庁はWFC運営会社側の口座への約8億7千万円の入金を確認したとしている。使途は何か。

 サーバー使用料やオフィスの家賃、担当者が各地のセミナーを回る費用など必要経費は多い。私的な流用はない。テキシア社の被害者救済を掲げたプロジェクトであることは変わっていないし、だますつもりはない。

 ――後継コインの現状は。

 保有者は約8万人。うち半分くらいが日本人で、テキシア社の被害者は約1万人いる。発行枚数は約10億枚で、半分弱が市場に出ている。