息子殺された父が10年間絶対に使わなかった言葉 動いた未解決事件

岩本修弥
[PR]

 神戸市北区の路上で2010年10月、高校2年の堤将太さん(当時16)が刺殺された事件は、4日で11年になる。コールドケース(未解決事件)は今年8月に動き、容疑者が逮捕された。父の敏(さとし)さん(62)は「気持ちが楽になった部分はある。でもまだ、今の心境を口に出したくはない」と複雑な心の内を語った。

 敏さんは毎年10月4日、情報提供を呼びかけるビラ配りをしてきた。10年間のビラ配りやインタビュー取材で、絶対に使わないと決めていた言葉がある。

 「自首してほしい」

 ある思いがあった。「絶対にこっちから(犯人を)見つける。罪の意識をもって欲しいから。それまではおびえて暮らしたらいい」

 今年8月4日、県警が逮捕したのは事件当時17歳の男(28)だった。

 いまは神戸地検が鑑定留置中で、精神鑑定などで刑事責任能力を見極め、起訴するかを判断する。期間は12月13日までで、起訴されれば裁判が開かれる。

 容疑者の逮捕後、敏さんが足を運び始めた場所がある。神戸地裁の傍聴席だ。

 9月には三木市で起きた死体遺棄事件と、尼崎市であった殺人事件の公判を傍聴した。いずれも裁判員裁判だった。

 これまでも何度か傍聴に行ったことはあったが、将太さんの事件の公判も現実味を帯びてきたと考え、「じっとしていられんくて」。

 裁判長らがどんな点に着目し、どんな判決を下すのかが気になり、通うようになった。13日から始まる、神戸市北区で2017年に起きた5人殺傷事件の公判も傍聴するつもりだ。

 事件から11年となる4日は、毎年続けたビラ配りはせず、自宅で静かに過ごす予定だ。将太さんの友人や捜査関係者ら、線香を上げに来る人を迎えて、息子の冥福を祈る。(岩本修弥)

     ◇

〈神戸・高2刺殺事件〉 2010年10月4日夜、神戸市北区筑紫が丘4丁目の路上で、友人と話をしていた堤さんが頭や首などをナイフで刺されて死亡した。捜査は難航し、12年には有力な情報提供者に最大300万円が支払われる捜査特別報奨金の対象事件に指定された。

 県警は昨年、「人を殺したことがある」と周囲に語る人物に関する情報を入手。発生から10年10カ月となった今年8月4日、愛知県に住む当時17歳のパート従業員の男(28)を殺人容疑で逮捕した。