母の急死乗り越え、ライチョウのヒナたち成長 スタッフの工夫と奮闘

小野智美
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 那須どうぶつ王国(栃木県那須町)が長野県中央アルプスから受け入れたライチョウのヒナ6羽が順調に成長し、白い冬羽(ふゆばね)も生えてきた。母鳥が急死してから20日余り。スタッフたちは母鳥に代わり、注意深くヒナたちの動きを見守っている。

 ヒナは成鳥の大きさまで育ち、顔や首、胸元には白い羽根も生えてきた。

 母鳥が急死した9月13日から数日間、ヒナたちは屋外放飼場に通じる扉を開けても1羽も出てこなかった。先導役の母鳥がいないためか、「クゥクゥ」という声を出し、落ち着かない様子だった。佐藤哲也園長は飼育員たちに「無理しなくていい」と話した。

 それから数日後、扉の外に好物の虫餌やリンゴ、コケモモを置いて待った。1羽が外に出ると、他のヒナたちも続いた。上空にカラスが姿を見せると、以前は母鳥の警戒の声を合図に松の下に逃げ込んだ。今は1羽が逃げるのを見て、他のヒナも逃げている。

 佐藤園長は「親離れの時期も近く、それぞれ力がついてきた」。

 母鳥の急死は細心の注意を払っている中で起きた事故だった。スタッフの衝撃は大きかった。モニターカメラの映像では、12日夜から、母鳥とヒナたちは激しく飛び回ることを繰り返した。13日午前2時すぎに母鳥が横たわって動かなくなり、ヒナもそれ以上は飛ばなくなった。

 雨も雷もない静かな夜だった。那須岳の火山性微動も疑い、気象庁の火山センターに確認したが、それもなかった。周囲には天敵のテンも生息する。建物内に侵入はできないが、外を歩く音が7羽に聞こえたのかもしれないと、事故後に夜間でも撮影できる赤外線センサーカメラを設置した。動物が近づけば照明がつくセンサーライトの設置工事にも着手した。

 チームリーダーの荒川友紀さんは、チーム全員で日常作業のあらゆる音を見直した。椅子を動かす音や掃除道具を置く音へのヒナの反応を確認した。

 事故後しばらく、荒川さんは午前2時にハッと目ざめることが続いた。眠れずにスマホでモニターカメラに映るヒナに目を凝らした。

 23日未明は周囲に雷鳴がとどろいた。建物そばの住宅で休んでいた佐藤園長は慌てて建物に駆けつけた。ヒナは飛び回ってはいなかった。

 今後の計画では、同じように中央アルプスからライチョウ家族を受け入れた茶臼山動物園長野市)とオスを交換し、来年の繁殖に備える。(小野智美)