桃太郎にも ラブチャンス 元社内ニートつくった短歌ゲームの味わい

小若理恵
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 5文字と7文字のカードを並べ替えて短歌をつくるカードゲームを大阪市の歌人なべとびすこさん(31)がつくった。「ハードルが高いと思われがちな短歌を楽しく身近に感じてほしい」と話す。

 7月に発売したカードゲームは名付けて「57577(ゴーシチゴーシチシチ)」(幻冬舎、税込み1760円)。5音と7音のカードが各54枚入っていて、カードを交換したり、並べ替えたりして短歌をつくる。最後に全員で短歌を発表し、最多得票者が勝ちとなるゲームだ。

 5年ほど前に自費で発売した「ミソヒトサジ」「ミソヒトサジ〈定食〉」に続く第3弾。今回から歌人の天野慶さんが企画に加わり、言葉のバランスやルールを再考した。より面白い短歌ができるよう、「もふもふな」や「ヤッホホゴリラ」など「ポップな」言葉を増やした。

 短歌との出会いは大学卒業後、印刷会社に勤めていた2014年。「社内ニートみたいな状態になって落ち込んでいた頃」のことだ。新しくできた部署で仕事の見つけ方がわからず、「自分がダメに違いない」と悩んでいた時、歌人穂村弘さんのエッセーに引き込まれた。

 うれしかったこと、嫌だったこと、過去、いま、悩み、希望……。心のなかに浮かぶたくさんの「言いたいこと」をそぎ落として三十一文字の短い世界に表現する。

 なべとびすこさんは「短歌をつくるようになって自分と向き合い、心の棚卸しができた」と振り返る。

 作品をツイッターで発信すると、短歌仲間との交流が生まれた。自分と同じ1989~98年生まれの「ゆとり世代」に作品を募る「YUTRICK(ユトリック)」を企画したり、ワークショップをしたりして活動を広げた。

 でも、やっぱり短歌を「ハードルが高い」と感じる人は少なくない。その理由に「難しさ」だけでなく、「恥ずかしさ」があるという。ゲームなら失敗しても、ロマンチックな歌になっても「カードのせいだから」と言い訳できる。

 新型コロナウイルスの影響で集まりにくくなった今、1人がゲームを持っていればオンライン飲み会などでも楽しめる。カードの組み合わせは約4億通り。なべとびすこさんは「アイスブレーク(打ち解けるきっかけ)になるし、友だち同士や親子で盛り上がって」と話す。(小若理恵)

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 取材では、なべとびすこさんに教えてもらってゲームを楽しんだ。はじめ5音のカード2枚と7音のカード3枚の計5枚を手にしたところから、カードを交換し、記者がつくった短歌は――。

 夢ならば 桃太郎にも ラブチャンス パン屋の前で 光りはじめる

 なべとびすこさんが「桃太郎は恋愛要素のないキャラ。夢のなかだからこそラブチャンスがあるのが効いてると思います」と、講評してくれた。

 続いて、なべとびすこさんの短歌は――。

 目が合えば 幽霊たちが よみがえり ピアノも弾ける ような気がした

 夜の教室で月明かりに照らされるピアノが目に浮かぶ。幽霊でも恐怖はなく、幻想的な音色が聞こえてくるようだ。

 なべとびすこさんは「いろいろな解釈やコミュニケーションを楽しんで」。

 なべとびすこさんが講師を務める入門者向けの講座「短歌はじめの一歩」は10月から第2土曜の午前10時~正午、大阪府豊中市のイオンタウン豊中緑丘にあるJEUGIAカルチャーセンターで開く。受講料は小中学生・月2200円、高校生以上・月2530円。カードゲームや穴埋め問題で短歌に慣れるところから始める。申し込みが必要。問い合わせは同センター(06・4865・3530)。