入管「単独室」死への13日間 助け呼ぶ姉の映像、遺族は目を背けた

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荒ちひろ
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 「スリランカ人女性が3月6日、収容中に亡くなった」。取材先の弁護士から翌7日、一報が入った。

 ウィシュマ・サンダマリさん、当時33歳。「日本の子どもたちに英語を教えたい」と夢を抱き、来日した女性が命を落とした場所は、名古屋出入国在留管理局の施設だった。

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 3人姉妹の長女。遺族によると、大学を出て英語教師として働き、家族を支えていた。教えていたインターナショナルスクールには日本人もおり、礼儀正しい子どもたちの姿から、ドラマやアニメで親しんでいた日本にさらに好感を持ったという。母親も「日本は安全な国だから」と安心して送り出した。

 留学という正規の滞在資格を持っていたウィシュマさんが、なぜ非正規滞在となり、入管に収容されたのか。

 私もかつて、アメリカ中西部の町と中東イスラエルに留学し、外国人として生活した。年齢も近く、ウィシュマさんは身近な存在に感じられた。

 そして、遺族から提供された生前の笑顔の写真と、車いすに座り、目がうつろで上体が動かせなかったという亡くなる直前の姿が結びつかなかった。

 ウィシュマさんの死を受け、出入国在留管理庁は庁内に調査チームを設置。8月、計300ページに及ぶ調査報告書を公表した。

収容半年で体重20キロ減

 ウィシュマさんを「A氏」とするこの報告書によると、ウィシュマさんは2017年6月末、留学生として来日。千葉県内の日本語学校に通ったが、翌18年2月ごろから欠席が目立つようになり、6月に除籍された。難民認定申請をして一時的にビザを得たが更新できず、19年1月から不法残留の状態になった。このとき、難民申請を取り下げている。

 20年8月、静岡県内の交番に出頭し、翌日、名古屋入管に収容された。当初は帰国を希望したが新型コロナの影響でかなわず、その後、日本にとどまりたいと望むようになった。21年1月中旬から体調を崩して食事や歩行も難しくなり、3月6日に亡くなった。収容から約半年で20キロ以上体重が減っていた。

 ウィシュマさんの死は繰り返し報道され、入管法改正案の事実上の廃案につながった。一方で、姉の死の真相を知りたいと5月に来日した妹のワヨミさん(29)とポールニマさん(27)ら遺族が求める答えは、いまだ明らかになっていない。最終報告としながら、明確な死因はわからないままだ。

 8月10日の報告書公表後の会見で、上川陽子法務大臣は「複数の要因が影響し、死亡に至った経過の特定は困難で、死亡結果との関係における職員の責任は確たることを申し上げることが困難」と結論づけた。

 会見場にいた私は、遺族の代理人を務める指宿昭一弁護士が3月末の時点で言っていたことを思い出した。

 「私は超能力者ではないが…

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