全国に60万台あるAEDで助かる命 女性への使用ためらわないで

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後藤一也
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 目の前で突然人が倒れたら――。意識を確認する、周りに助けを求める、救急車を呼ぶ、自動体外式除細動器(AED)を取りに行く。だが、女性への使用をためらったり、設置場所がわからなかったりするケースもある。いざというときにAEDを適切に使えるよう心がけたい。

女性でも迷わず使って欲しい

 2013年冬、京都府の柘植(つげ)彩さん(46)は、市民マラソン大会の残り1キロ地点で倒れた。沿道にいた人がすぐに異変に気付いて心臓マッサージを始め、救急車が着くまで6分間、懸命に胸を押し続けてくれた。

 救急車よりも、AEDを載せた大会の救護車のほうが早く現場に着いていたが、AEDは使われなかった。彩さんの心臓が再び動き出したのは、倒れてから45分後。その間は脳に酸素が届かず、意識障害が残った。体はほとんど動かせず会話は難しいが、まばたきや発声で意思を伝える。

 「女性だから」という理由でAEDが使われなかったことを夫の知彦さん(54)が知ったのは、大会から約1年後のことだった。AEDは電極付きのパッドを肌に貼り付け、電流を流して心肺を蘇生する装置だ。パッドを肌に直接つけるため、男性よりも女性に使われにくい傾向がある。知彦さんは「女性だから命が助からないことがあってはならない。繰り返し講習を受け、AEDについて正しい知識を持ってくれる人を少しずつ増やしたい」と話す。いまは小学校や中学校に対し、AEDの講習をするよう訴え続けている。

 国内の研究者が、08年4月から15年12月までに、国内の学校で心停止をした子ども232人の救命措置について調べ、19年に論文で報告した。小学生と中学生では男女差はなかったが、高校や高等専門学校の生徒では、AEDのパッドが貼られたのは男性83%、女性56%だった。

 AEDの原則は、普段通りの呼吸がないと判断したら服を脱がせ、「右の鎖骨の下」と「左のわき腹あたり」の汗を拭き取り素肌にしっかりパッドを貼る。場合によっては男性は胸毛でうまく貼れないことがあるため、カミソリがセットで置かれていることもある。

素早く素肌にパッドを貼れるなら、下着脱がせなくても

 女性の場合、下着を脱がせることに抵抗感があるが、日本AED財団は、素早く素肌に貼り付けられるなら、必ずしも服をすべて脱がす必要はなく、ネックレスや下着の金属部分がパッドに触れなければAEDは使用できるとしている。東京都多摩府中保健所は、「女性にAEDを使うのをためらわないで!」という啓発ポスターを作り、服を脱がせない方法をまとめている。

 同財団専務理事の石見拓・京都大教授は「女性に使う障壁をひとつずつ無くしていき、全国に60万台以上あるAEDを有効に使えるようにしたい」と話す。

 AEDは心室細動を起こして…

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