岸田内閣、名付けるとすれば 「女性登用もあの範囲内だから…」

自民岸田政権

長富由希子 川見能人 江戸川夏樹
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 4日に発足した岸田内閣に命名するとすれば、何内閣か。識者に尋ねた。

「あれどうなりましたっけ」があまりに多い

 クリエーティブディレクターの辻愛沙子さん(25)は「虎の威内閣」と名付けた。

 岸田首相が総裁選で安倍晋三元首相ら「虎」の威を借りた結果、各派閥に大きく配慮した人事になったと見る。野田聖子氏が閣僚入りしたが、「虎の威」の中での女性登用に感じるという。「安倍さんお抱えの高市早苗氏の党政調会長就任が象徴的だが、本質的な改革とはいえない。政治が国民ではなく、党などの『内』を向いていると痛感した」とした。

 こうした政治は、日本政治の長年の問題だと指摘。「我々世代も含めて、政治に関心をもつことが解決につながるのでは。投票率の高さは、『こっちみて政治せんかいっ』という政治家へのプレッシャーだ」長富由希子

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全体に地味な人選 政策や人柄よく分からない

 九州大学法学部の教授で憲法学が専門の南野森(しげる)さん(51)は、「イメージわかない内閣」と名付けた。

 20人中13人が初入閣。子ども関連の政策を重視してきた野田聖子氏の少子化相は「適任」に思え、茂木敏充外相や岸信夫防衛相といった再任者も政策の想像はつく。ただ全体的に地味な人選に思え「堅実で周囲の話にも耳を傾ける人が多いのでは」との期待の一方、「各自の政策や人柄がよく分からず、内閣全体の色合いも見えづらい」という。

 注目するのが、国民に丁寧に説明する姿勢が不十分だった安倍・菅政権との違いだ。岸田首相は「丁寧で寛容な政治」を打ち出し、今月にも予定される衆院選に向け、各閣僚の発言や態度が大きな判断材料になるとみる。「森友・加計問題などいまだに説明が不十分な問題への対応や記者会見での言動に、説明することへの認識が表れると思う。首相が代わり、内閣の意識も一新されたと言えるのか、注意深く見ていきたい」(川見能人)

未来を見据えるのが人事、組閣は過去への報酬

 一橋ビジネススクール教授で経営学が専門の楠木建さん(57)は、「あえて名付けるとしたら、『いつもの内閣』」と言う。

 企業で言えば、首相は社長であり、閣僚は事業部長と言える。事業部長は、戦略構想を立て、意思決定し、組織を動かす経営の中核だ。「未来を見据えて、仕事に人をつけるのが本来の人事。だが、組閣は逆。総裁選での応援といった過去の出来事に対する報酬として、人に仕事をつけている」と分析する。

 党の主要派閥から登用する一方で、総裁選で河野太郎氏を支援した石破茂氏や小泉進次郎氏の登用はなかった。

 「派閥争いとも言える総裁選があり、そこで選ばれれば、日本のトップになるという現在の政治構造では仕方がない。結局、この慣習が続いてしまった。これまで通りだから『いつもの内閣』だ」と指摘した。

 楠木さんが注目するのは、官房副長官人事だという。警察庁出身で歴代最長の杉田和博氏が退任し、栗生俊一警察庁長官が就任する。「省庁の縦割りが問題になっているのに、子ども庁やデジタル庁など縦割りを増やそうとしている。省庁をつなぐ調整役を務める官房副長官の役目は大きい。岸田新首相が余人をもって代えがたいと、能力で選んだのが栗生氏だと思う。どんな働きを期待しているのか、何を目指しているのか、説明して欲しい」(江戸川夏樹)