動画の広告市場は膨らみ、ユーチューバーは小学生の「なりたい職業」の上位に毎年のように入る。動画ビジネスが過熱した先に何があるのか、警鐘とともに描いた米映画「メインストリーム」が8日公開される。ジア・コッポラ監督(34)にZoomでインタビューすると、再生回数や「いいね」を稼ぐ呪縛を組み込んだプラットフォーム企業への問題提起が飛び出した。
「もっと稼げる動画を」 かかるプレッシャー
舞台は米ロサンゼルス。人生の目的を描けぬままバーで働き、合間に動画を撮ってはユーチューブにアップしていた20代の女性フランキー(マヤ・ホーク)が、話術にたけた青年リンク(アンドリュー・ガーフィールド)と知り合い、彼を中心としたユーチューバーのチームを結成する。再生回数や「いいね」の数が爆発的に増え、ハリウッドのやり手マネジャーからも連携を持ちかけられ、「もっと稼げる動画を」とプレッシャーをかけられるうち、思わぬ事態に――。
モデルでタレントのローラさんも、ユーチューバー役として出演している。
コッポラ監督は、巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督(82)の孫。人気ユーチューバーのマネジメントなどを手がける米大手スタジオで友人がマネジャーをしているのを知り、「どうやって稼いでいるのか」と関心を持ち、脚本を書いたという。
友人はコッポラ監督に、「世界中の何百万もの人たちが、誰かがテレビゲームをやっている姿などを動画で見ている。視聴者がユーチューブの『メインストリーム』を作っているけれど、その自覚がない」と言っていたという。今作のタイトルだ。
「子どもが何百万ドルも稼ぐ。尋常ではない」
「子どもがおもちゃ箱を開ける(動画を見せる)だけで何百万ドルも稼ぐこともあるなんて、尋常ではない。中には、必ずしもストーリーのない動画を出しても、著名人よりフォロワーが多いユーチューバーもいる。一体どういう点に共感が寄せられているのか、知りたいと思った。いまだに理解できていないところもあるけれど」と、コッポラ監督はZoomの画面越しに語った。
ユーチューブには子どもから…
【視点】ネットに記事を書くようになって、新聞記者もこの問題の当事者になっているところがあります。 私も、もちろん自分の記事の数字は気になります。書いた日とか翌日はドキドキしながらチェックします(そしてたいていあんまり読まれません…)。
【提案】他人からもらう「いいね」が自己評価と結びついてしまう状況は、人間の自意識の在り方として非常に危険だと思う。自分の価値を他人に委ねてしまうことだから。他人にそっぽを向かれようと、自分は自分で価値があると思うことをするという姿勢も、人間には必要