教会で性被害21万人超 仏でカトリック神父ら3千人関与との報告書
フランスのカトリック教会の神父らが、21万6千人の子どもたちに性的虐待などの性被害を加えたとする報告書が5日、公表された。70年間にわたり、2900~3200人の聖職者が関与したという。
同日、フランスのカトリック教会から依頼を受けた独立調査委員会が記者会見して明らかにした。
委員長を務めたフランスの国務院(行政裁判の最高裁に相当)元副院長のジャンマルク・ソベ氏によると、被害者の8割は少年で、大半が10~13歳の頃に被害を受けた。加害者に教会の補助職員らを加えると、被害者の数は推計33万人に上るという。ソベ氏は「2000年代初めまで、被害者は深く、完全に、残酷なまでに無視されていた」と指摘。教会が神父を異動させるなどして組織的に隠蔽(いんぺい)していたという。
ソベ氏はまた、「被害者の証言がなければ、我々の社会はなおも無知のままで、起きたことを拒み続けていただろう」と被害者の勇気をたたえた。被害の56%は教会の影響力が強かった1950~70年に起き、多くは時効が成立しているとみられる。ソベ氏は、教会が金銭的補償をすべきだと指摘。ソベ氏から報告書を受け取ったフランス司教の代表者は「許しを乞いたい」と語った。調査委は、未婚の男性に限っている神父の資格を妻帯者にも開くことを検討するよう求めている。
調査委は弁護士や神学者ら22人が所属。2015年以降、カトリック教会の聖職者から性的虐待を受けたという被害者の告発が相次いだため、司教団体らが18年に調査委を設置。調査委は被害者への聞き取りや、教会の地下室に残されていた事件記録の収集を続けていた。
カトリック教会では、02年に米ボストンの神父が130人以上に性的虐待をしたと報じられたのをきっかけに、世界各地で被害の告発が相次いだ。アイルランドやドイツでも同様の調査報告書が公開されている。フランスでは、神父と子どもという非対称な権力関係に加え、男性が重要な職務に就く教会の特殊性が事件の背景にあると指摘されている。(パリ=疋田多揚)
- 【視点】
フランスのカトリック教会の聖職者による性虐待の報告書は、調査で虐待されたことがあると答えた人の数に基づき、1950~2020年に全国で未成年者21万6000人が聖職者から虐待を受け、カトリック学校や教会の青少年プログラムの関係者による虐待も
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