豪雨災害の球磨川を舞台に映画制作 八代出身の監督

村上伸一
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 故郷の八代や阿蘇、天草など熊本県を舞台にした映画を作ってきた遠山昇司監督(37)が、昨年7月の記録的豪雨で氾濫(はんらん)した球磨川をめぐる劇映画の制作に取り組んでいる。透明感のある幻想的な映像を得意とする遠山監督は「大切な命を失った人間の姿を、球磨川の流れとともに描いてみたい」と意気込む。

 約5年ぶりという新作長編映画の題名は「あの子の夢を水に流して」。生後10カ月の息子を亡くした女性が、10年ぶりに故郷の八代に帰省する。幼なじみの男友達2人と一緒に、豪雨災害の痕が残る球磨川を上流から下流へと巡り始める――。今月中に流域での撮影を終え、来年秋ごろの全国公開を予定している。

 遠山監督は1日、八代市鏡支所を訪れ、中村博生市長に映画制作を報告。中村市長は「被災地の八代市坂本町の住民の中には、戻ることを迷っている人がいる。映画ができれば、やっぱり戻りたいと思ってもらえるのではないか」と歓迎した。

 その後の記者会見で、遠山監督は「これまで故郷の田園や海の風景を描いてきた。川は初めてで、昨年の豪雨災害をテレビやSNSで見た時、球磨川を舞台にしようと思った」と語った。また、「圧倒的な自然の力によって、なすすべがない状況であっても、川とともに生きるという感覚が地域の人にはある」と、球磨川に対する住民の愛着にも触れた。

 主演女優は内田慈(ちか)。人吉市出身のベテラン俳優、中原丈雄が喫茶店のマスター役で出演する。

 監督は八代市内の秘境といわれる五家荘(ごかのしょう)を舞台にした短編映画「冬の蝶(ちょう)」(2016年)で、テヘラン国際短編映画祭アジア・コンペティション部門グランプリを受賞。さいたま国際芸術祭2020のディレクターも務めた。(村上伸一)