ユージン・スミスのまなざし今も 残された人たちのMINAMATA
奥村智司
写真家ユージン・スミス(1918~78)が水俣病を世界に発信しようと現地を訪れてから今年で50年。ユージンの「MINAMATA」は国内外で活動を続ける人たちに受け継がれてきた。ユージンを描いた映画の国内公開が始まり、この未曽有の公害を伝える動きが広がっている。
「ユージンから暗室作業を習ったから、彼のやり方というか癖がしみついてるんですよね」。9月中旬、東京都内のスタジオにある暗室。カメラマンの石川武志さん(71)は熊本県水俣市で50年前にユージンを撮影した写真を焼いていた。
かざした手をもむように素早く動かし、印画紙に当てる光を調節する。映画「MINAMATA」でユージンを演じたジョニー・デップが、暗室のシーンで似た手つきをしていた。
ユージンと妻のアイリーン・美緒子・スミスさん(71)が水俣に滞在した71~74年、石川さんは起居を共にしながらアシスタントを務めた。
ユージンの水俣病の写真は、苦しむ患者の顔や姿をとらえて被害を訴えるのではなく、病を背負いながら暮らす姿を寄り添うようにして収めた、と石川さんは感じている。「つまりは人間を撮っている。それが他の写真と違う点ではないか」
ジョニー・デップが聞いた、写真の声
写真は小さな声だがときに物…