第1回感動以外に何を還元?突かれたスポーツ界 為末大さんが見た東京五輪

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聞き手・宮崎陽介
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 深刻なコロナ禍のさなか、開催の是非をめぐって大揺れした東京五輪は私たちに何をもたらし、どんな課題を突きつけ、何をどう変えていく端緒にすべきなのか……。シドニー、アテネ、北京の3大会連続で五輪出場を果たし、その深い思索から“走る哲学者”の異名をとる元陸上400メートルハードル選手の為末大さんに、スポーツと社会のよりよい関係とは何かという視点を軸に話を聞いた。

――今大会への率直な思い、収穫や課題を聞かせてください。

為末 今回の五輪が感染拡大にどれくらい影響を与えてしまったのか、結果が出るまで開催の成否は分かりません。

 競技については、選手たちのコンディションはもう少し悪いと思っていましたが、おおむねとてもいい記録を出して、無観客の影響もあまりなかったと思うようなパフォーマンスでした。日本のメダル数が多いのは、ふだん選手たちがトレーニングをしている国立スポーツ科学センター東京都北区)に“バブル”を作り、本番前もそこでトレーニングができたこともあると思います。もともとフェアな条件ではないということは、山口香さん(元日本オリンピック委員会〈JOC〉理事)もおっしゃっています。メダル数より、テロもなく開催できたことを誇らしいと思ったほうがいいですね。

 印象に残っているのは、トランスジェンダーの選手の出場によって、公平性やあるべきルールについて問いかけがなされたこと。私たちはそれらをシンプルに考えていましたが、男性や女性、LGBTQなど多様性があることに気づかせてくれました。男性ホルモンがパフォーマンスに大きく影響しますが、男性の体として生まれながら、女性として出場する場合、どういう分類にすればいいのか。試合に出さないとスポーツをする権利を奪うことになり、試合に出すと圧倒的にすぐれてしまうところがあります。突き詰めると、オリンピックとパラリンピックをなぜ分けるのか、男女を分ける必要があるのかということに行き着きます。

 もう一つはスケートボードの選手たちが、国籍をあまり気にせずパフォーマンスをしていたこと。五輪から最も遠い印象のあった競技でしたが、五輪の理念を一番体現していたとも思いました。

 準備の段階で日本側の問題はたくさんありました。また、IOC(国際オリンピック委員会)の構造的な問題など様々なものが噴出し、五輪自体が変わらないと、国際的世論に受け入れられていかないと感じています。

世界平和の理念を実現するため、五輪にはビジネスがある。選手時代のそんな思いに、為末さんは疑いを抱くようになったと言います。その理由とは。後半では、「何のためにスポーツをするのか」を考えます。

――IOCはどう変わるべきですか。

為末 五輪をやると開催都市の…

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連載為末大が語る五輪とスポーツ(全2回)

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