母が出廷「娘を返して」、被告に懲役20年求刑 熊大研究員殺害

屋代良樹
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 熊本市で昨年9月、熊本大学の特定事業研究員の女性(当時35)を殺害したなどとして殺人と死体遺棄の罪に問われた住所不定、無職熊谷和洋被告(68)の裁判員裁判が6日、熊本地裁(平島正道裁判長)であり、検察側は懲役20年を求刑した。判決は8日に言い渡される。

 起訴状によると、熊谷被告は昨年9月6日、当時住んでいた熊本市中央区本荘3丁目の自宅の集合住宅出入り口付近で、女性の首をひものようなもので絞めて殺害し、近くの側溝に遺体を遺棄したとされる。

 検察側は論告で、首を絞められた遺体の状況から「強い殺意があった」と指摘。熊谷被告が被告人質問で「口をふさごうとした」と話したことについては「口やほおにひもでしめられた痕がなかった」と反論し、これまでの熊谷被告の供述についても「不合理で信用できない点が多く、真摯(しんし)な反省が認められない。犯行に至る経緯、動機に全く同情の余地はない」と述べた。

 弁護側は起訴内容について「争わない」と改めて認め、「マスクを開発して寄付したいので、デザインを考えてほしい」といった被告のうそが発覚したことで女性から非難されたため、「黙らせるために無我夢中で犯行に及んだのであり、人の命を軽視したわけではない」と主張。謝罪と反省をしており、「とっさの犯行」で計画性がないとして、「懲役15年が相当」と述べた。

 女性の母親も被害者参加制度を利用して出廷した。女性は熊谷被告からマスク開発などの話を持ちかけられていると、家族に伝えていたという。一人娘だったといい、「小さいころからアメリカでウイルスの研究がしたいと夢見て、研究員としての道を歩み始めたというのに。なぜ殺されなければならなかったのか」「娘はこれから親孝行すると言っていました。そんな娘を返してください。犯人には死刑を望みます」と語った。

 熊谷被告は閉廷まで姿勢を変えず、目を閉じていた。最終陳述で「本当に申し訳ないです。これから償っていきたいと思います」と小さな声で話した。(屋代良樹)