第1回リベラルの伝統と「安倍政治」のはざま 「岸田色」を探したプリンス

有料会員記事岸田政権

西村圭史、笹井継夫、岩尾真宏
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 8月25日夜、東京都内のホテルの高層階にある一室。自民党総裁選への立候補表明を翌日に控えた岸田文雄は、率いる岸田派の若手を前に記者会見の「台本」を読み上げていた。

 「総裁を除く党役員は1期1年、連続3期まで……」。その場で、総裁選で目玉にすえる「公約」も確認した。党役員の任期制を打ち出し、歴代最長の5年にわたり幹事長ポストに座る二階俊博を争点にする。首相の菅義偉と二階の協力関係に打ち込む、渾身(こんしん)のくさびだった。

 「すごくいい!」「勝てますよ!」。若手らは岸田に称賛を浴びせ、けんか上手の「菅―二階」に挑む岸田を鼓舞した。

 一方の岸田は淡々としていた。「勝てる、勝てないじゃない。選択肢を示せなかったら、党も民主主義もおかしくなってしまう」。これまで菅らに押し込まれてきた岸田の力強い言葉を、若手の一人は意外感をもって受け止めた。

一世一代の大勝負に出た岸田。主流派から「転落」した後、首相に登り詰めるまでの紆余曲折に迫ります。

 少し前まで、岸田は総裁選への迷いを口にしていた。新型コロナウイルスの「第4波」がピークに達した5月半ばには、周囲に「コロナがあるから無理」と漏らした。岸田側近は「菅さんに挑む形では総裁選に出ない」とみていた。

 岸田は昨秋の総裁選で菅に完敗し、主流派から転落した。安倍政権下で幹事長ポストをうかがったことから、二階とも衝突した。「政治とカネ」の問題を問われた今春の地元・広島での参院再選挙は、全面支援した候補が敗れた。岸田派が党のリベラルの系譜に連なることから、「飛べないハト」と揶揄(やゆ)された。

 岸田はその後、抜き差しなら…

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