心まで「ば ら ば ら」にはなりたくない 穂村弘さん

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言葉季評

 去年の初めごろ、なんだか怖(おそ)ろしいウイルスが外国で猛威を振るっているらしい、というニュースを聞いた。でも私は、怖いなあ、こっちにこないで欲しい、と思うだけだった。正体不明の相手に対して、何をどう備えればいいのかわからず、ぼーっとしてしまったのだ。気がついた時には、マスクも消毒液も手に入らなくなっていて焦った。その時、新聞の短歌欄に投稿されたこんな歌を見た。

ベリーミックスヨーグルト風味の空でしたマスクさがして夜明けのコンビニ          田村樹香

 

 ああ、自分だけじゃないんだ、と思った。時間帯や場所によってはマスクを買えることもあるらしいという噂(うわさ)を聞いて、私も明け方のコンビニを何軒も回ったことがあった。でも、見つからない。「ベリーミックスヨーグルト風味」という表現には夜明けの空の微妙な色や質感のほかに、今日という日はいったいどうなってしまうのか、という不安感が込められているようだ。

 あれから一年と数カ月が過ぎて、今ではマスクが見つからなかった頃の気持ちがだいぶ遠いものに思える。コンビニにはいろいろな種類のマスクが溢(あふ)れている。簡単に手に入ることは有り難いが、それだけコロナ禍が長引いているのだ。

 ほむら・ひろし 1962年生まれ。歌人。著書に「シンジケート[新装版]」(歌集)、「鳥肌が」「短歌の友人」など。

 

消毒のポンプの押すところを消毒するポンプの押すところを消毒  

            カラスノ

 

 新型コロナウイルスへの対抗…

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