今年のノーベル文学賞は誰の手に あの出来事で選考に変化が?

中村真理子
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 2021年のノーベル文学賞が7日午後8時(日本時間)、スウェーデン・ストックホルムで発表される。ときに世界文学の潮流を作り出してきた文学賞。欧州のブックメーカー(賭け屋)では村上春樹さんの名前が上位にあがるが、はたして誰の名前が読み上げられるか。世界の注目が集まる。

 欧州のブックメーカーでは、村上さんのほか、アニー・エルノー(仏)、グギ・ワ・ジオンゴ(ケニア)、マーガレット・アトウッド(カナダ)といった名前が続く。過去には、欧州でも高く評価される多和田葉子さん、小川洋子さんといった名前も取りざたされてきた。賞の候補者名は50年間明かされないため、実際に誰が候補になっているかはわからない。

 ノーベル文学賞は1901年に創設。日本ではこれまで、川端康成(68年)と、大江健三郎さん(94年)が受賞している。作品ではなく人を選ぶ賞で、ジャンルは詩、小説、戯曲、ノンフィクションに広がる。

 歴代の受賞者は、トーマス・マン(独、29年)、ヘミングウェー(米、54年)、カミュ(仏、57年)といったそうそうたる顔ぶれだ。

 70年代までは、欧米文学への偏りが指摘されていたが、82年にコロンビアガルシア・マルケスが受賞、ラテンアメリカ文学ブームにつながった。

 ナギーブ・マフフーズ(エジプト、88年)、オルハン・パムク(トルコ、2006年)、莫言(中国、2012年)など、アジア、アフリカの作家にも光をあてている。

 選考結果が驚きをもたらすことも。

 ミュージシャンのボブ・ディラン(米、2016年)は詩人としての受賞だった。ベストセラー作家のカズオ・イシグロ(英、17年)も話題になった。

 性被害に声を上げる「#MeToo」運動の流れから、賞を選考するスウェーデン・アカデミー内でスキャンダルが発覚。これを機にノーベル文学賞は変化している。

 17年、アカデミー会員の関係者に長年の性的暴行疑惑が持ち上がる。アカデミーは翌18年の発表を見送り、組織改革を行った。選考の情報が外部に漏れていたことも問題となった。終身制を見直し、会員の入れ替えを行ったという。

 その18年分として選ばれたのは、ポーランドのオルガ・トカルチュク。フェミニストとして知られる女性作家だった。昨年は米国の詩人ルイーズ・グリュックに。先月初めての邦訳「野生のアイリス」が刊行された、日本では知られざる詩人だった。アカデミーはおそらく、女性の作家に注目するのではないか。(中村真理子)