新型コロナウイルス感染症を、早期に飲み薬で治療できるのではないか――。米メルクが開発中の飲み薬「モルヌピラビル」。年内にも米国で緊急使用許可が下りる可能性や、日本でも製造販売の承認を申請する考えであることが報じられ、そんな期待が高まっている。
しかし米ニューヨークのマウントサイナイ医科大老年医学・緩和医療科の医師、山田悠史さん(38)は、「タミフルのように、若い人も飲んで回復までの期間を短くするといった薬の使い方は今のところできない」と指摘する。感染したら「早めに飲んで、早めに治す」という使い方が難しい事情を、山田さんが解説する。
米マウントサイナイ医科大の山田悠史医師
モルヌピラビルは、新型コロナウイルスの遺伝情報が載っているRNAが複製される際にミスを起こさせ、ウイルスが増えないようにするという新しい働き方をする薬です(*1)。
なんといっても一番の強みは、飲み薬であることです。
重症化予防のために抗体製剤を使う「抗体カクテル療法」や、入院患者の治療に使われてきたレムデシビルは点滴でしか治療できません。
そのため自宅や療養施設の患者に使うのは難しかったのですが、これが飲み薬であれば、活躍のシーンは大幅に増えるでしょう。
このほかにも、既存のコロナ治療薬にはいくつかの問題点があります。
抗体製剤は確かに高い有効性を確認できました。しかし、そもそも抗体がしっかりできているワクチン接種後の患者への追加効果は必ずしも明らかではありません。
モルヌピラビルは、既存薬と比べて使い勝手がいいことは確かです。ただし抗インフルエンザ薬タミフルのように、誰もが処方される薬にはなり得ない理由について、記事の後半では解説しています。
ワクチン未接種の患者や、ワ…

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