「聞き上手」の岸田首相に聞いてほしいことは 8日の所信表明前に

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武田啓亮、長野佑介
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 岸田文雄首相が8日に国会で就任後初となる所信を表明する。歴史をひもとくと、時の首相のカラーがにじむ演説も多い。「聞き上手」を自任する第100代の首相の演説に街の人々は何を期待し、求めるのか。(武田啓亮、長野佑介)

「不安抱えなくても良い政策」「『隠し事はしません宣言』を」

 「漠然としたビジョンや実感の湧かない数字ではなく、具体的な国民の暮らしの話をして」。そう訴えるのは東京都目黒区の自営業の女性(47)。アベノミクスでも実際の生活は良くならなかったと感じる。所信表明では「中間層の復活」を目指す岸田首相の本気度に注目したいという。「踏み込んだ話をしてくれるのか、口にした目標を形にできるのか見極めたい」

 江東区の会社員男性(55)は「国民の将来に対する不安を拭ってほしい」と話した。コロナ対策だけでなく、年金や介護といった社会保障の課題や少子高齢化の問題でも具体的な対策を示してほしいと思う。「個人消費が伸びないのは、多くの国民が不安を抱えているからでもある。生活に不安を抱えなくても良いような政策を打ち出してほしい」

 東京都昭島市の塗装業、三上望さん(58)は、政治とカネの疑惑を問われ、閣僚を辞任した甘利明氏を党幹事長に起用した岸田首相の人事が腑(ふ)に落ちなかった。菅義偉前首相は目に力がなく、自信がなさそうに映った。だからこそ「人に思いを伝えるには、熱量が必要」。岸田首相には「自分のやりたいことを熱く語ってほしい」と話す。

 「聞かれたことにはきちんと答える姿勢が大切だと思う。『隠し事はしません宣言』を」。そう語ったのは、大田区の会社員男性(51)だ。

 安倍晋三元首相時代に発覚した森友学園を巡る国有地売却や公文書改ざん問題などの一連の問題で、「政府はいまだにきちんと説明せず、政治不信を招いている」と思う。自民党総裁選の告示前、岸田首相は森友問題の再調査に前向きな姿勢を示した。だが、その後、再調査はしないと表明した。「岸田さんは人の話を聞くのが特技と言っているが、今は党内の人の話を聞いている印象」と話す。

 東京都青梅市の会社員、並木伸仁さん(41)は、郵政民営化を推し進めた小泉純一郎元首相時代を懐かしむ。「小泉さんは自民党という枠から飛び出ようという意思を感じた。その後の自民党の首相は党の枠内に収まろうとしているように感じる」。菅前首相は会見でも用意された紙をただ読んでいるだけのようにみえた。「所信表明では棒読みしないで、自分の言葉で自分がやりたいと思うことをきちんと伝えてほしい」

 江戸川区の会社員男性(66)も「国民に向けて気持ちを込めて話をしてほしい」。菅前首相の印象は「原稿を読み上げるばかりで胸に響くような言葉がなかった」。岸田首相には「癖の強い自民党の政治家の中で埋没しないよう発信力を発揮してほしい」と期待する。

 コロナ禍で時短営業や酒提供の制限が繰り返されてきた飲食店。東京・新橋の居酒屋「正味亭尾和」店主の尾和正登さん(53)は「新政権に望むことはとにかく景気回復」と話す。

 売り上げが激減する中、昨春にいた正社員5人のうち3人には辞めてもらうしかなかった。10月から酒を提供できるようになり、時短要請に応じながら店を開く。ただ、売り上げはコロナ禍前の4分の1ほどで苦境は続く。党役員人事や組閣をみて、適材適所というよりも安倍元首相や麻生太郎前副総理への配慮や派閥の論理が優先されたように思えた。「私たちはかつての日常とはほど遠いのに、岸田さんはいまだに古い政治をしているように見える」という。

 8日に求めるのは国民への姿勢だ。「党内の人にではない。私たちに向かってしゃべってほしい」

■「聖域なき構造改革」「美し…

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