動画を「倍速視聴」する理由 しらみつぶしに知りたい?だけじゃない

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聞き手 編集委員・塩倉裕、田中聡子、中島鉄郎
写真・図版
イラスト・朝岡 遊
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 スマホで見る動画の流行はいま「短く速く」だ。「倍速視聴」で見るスタイルも定着しつつある。飛ぶような映像で見る世界。何が「速さ」へ駆り立てるのか。(聞き手 編集委員・塩倉裕、田中聡子、中島鉄郎)

「世界を知りたい」欲望 大澤真幸さん(社会学者)

 ドラマもアニメもSNS動画も早送りで視聴する。そんなスタイルの広がりには、僕も興味を引かれていました。背後には実存的な切迫感がひそんでいるように見えます。本人たちが意識しているかどうかは分かりませんが。

 1990年代あたりから注目され始めたオタクというありようが、社会の中で一般化したことを表す現象でもありそうです。オタクが普通のことになり、普通の人々がオタクっぽくなったのです。

 人間には「世界を知りたい」という本源的な欲望があります。一つの全体としての世界です。この世界では何が重要なのか。それを知ることで人は、自身の生きる意味やアイデンティティーを確認していく。でも、世界全体を知ることは不可能です。なぜなら時間が足りないから。

 それでも以前ならば、「こう見れば世界のあり方がつかめる」という座標軸や図式のようなものがありました。何が重要であり、どれがより大事な情報であるのかについての理解が共有できた世界では、その重要な情報だけを押さえれば世界を知った気分になれたのです。しかし、そのような共有できる座標軸は雲散霧消していきました。世界のあり方をつかむことが難しくなってしまったのです。

若い世代を中心に広がる動画の「早送り視聴」の背景にあるものは。後半では大澤さんに続き、テレビを1.2倍速で視聴するという「ワンメディア」代表取締役の明石ガクトさんと、日本映画大学4年生の安部友梨さんが語ります。

 ガイドがない以上、しらみつ…

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