有名歌手もスポーツ選手もタックスヘイブン パンドラ文書で判明

[PR]

 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した「パンドラ文書」には、タックスヘイブン租税回避地)の法人を利用する多くの芸能人やスポーツ選手などの名前もあった。政財界の大物や大企業だけでなく、著名人にとってタックスヘイブンは魅力があるようだ。

 朝日新聞が提携するICIJは、タックスヘイブンに会社や信託を設立・管理する法律事務所など14社の1190万件以上の内部文書を入手し、パンドラ文書と名付けた。

 文書によると、ビートルズ元メンバーのリンゴ・スター氏は、カリブ海のバハマに不動産を購入するための会社を二つ、パナマにライブ収益などを管理する信託を少なくとも五つ設立していた。

 英国の歌手エルトン・ジョン氏は、英領バージン諸島に複数の会社を登録していた。同氏が携わったミュージカル「ライオン・キング」や「ビリー・エリオット」の名前を冠した会社もあった。さらに17年に作製したロゴの収益を納める会社もつくっていた。エルトン・ジョン氏の代理人は、タックスヘイブンの会社について「租税回避の意図はない」と話す。

 ドイツ出身のモデル、クラウディア・シファー氏はバージン諸島に少なくとも六つの会社を所有し、信託もつくっていた。

 広告収入で稼ぐ著名人もタックスヘイブンを利用していた。文書やICIJの取材によると、アルゼンチン出身のサッカー選手アンヘル・ディマリア氏は2009年、パナマに設立した会社に自身の肖像権を移した。会社は、同氏がスポーツ飲料などの広告に出演する際の窓口になっていた。

 また、文書からはセレブたちが不動産の購入時に、タックスヘイブンの会社をしばしば使っていることも明らかになった。ICIJは、著名人らがタックスヘイブンの特徴である秘匿性ゆえに、ファンに所有物件を特定されにくいという事情があるとみている。

 さらにはタックスヘイブンのネットワークを通じて、英国のサッカークラブが売買されていたことも文書からわかった。07年、英国とイタリアの実業家が所有するバージン諸島の会社が、経営難だったロンドンのサッカークラブ「クイーンズ・パーク・レンジャーズ」を買収。さらにクラブの権利は売りに出され、11年、英王室属領のジャージー島の会社が購入した。クラブの財務諸表によるとマレーシアの富豪の手にわたったとみられる。

 18年の調査では、イングランドスコットランドのサッカークラブの約4分の1に、英国外の株主がいた。英シンクタンク「タックスウォッチ」のジョージ・ターナー事務局長は、「タックスヘイブンのネットワークを持つ超富裕層がクラブを買収するようになっている」と指摘する。

     ◇

 ICIJ 米ワシントンに事務所を置く非営利組織国際調査報道ジャーナリスト連合(International Consortium of Investigative Journalists)の頭文字をとってICIJと呼ばれる。国境を越えて世界にまたがるような不正や社会問題に関する取材・報道で、各国の調査報道記者が互いに助け合うための要となるネットワーク組織として、1997年に設立された。100超の国・地域の280人の記者がメンバーになっており、プロジェクトごとに朝日新聞など各国の報道機関と提携している。朝日新聞からは2011年に記者がメンバーとなり、2012年に社として提携した。租税回避地の問題のほかに、医療機器の不具合や東京五輪招致をめぐる不明朗な資金の流れも取材の対象にしてきている。

     ◇

 パンドラ文書 英領バージン諸島やケイマン諸島などの租税回避地に法人や組合を設立するのを専門とする14の業者、法律事務所から流出したとみられる1190万件余、2・94テラバイトの電子ファイル群。匿名の人物から国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に何回かに分けて提供され、多くは1996年から2020年にかけ作成されていた。

 ICIJの呼びかけに応じ、朝日新聞、共同通信(日本)、ワシントン・ポスト(米国)、ガーディアン、BBC(英国)、ルモンドフランス)、南ドイツ新聞など、117カ国から600人のジャーナリストが分析と取材に参加。取材チーム内部で話し合って、「パンドラ文書」と名付け、10月3日(日本時間4日午前1時半)に一斉に報道を始めることにした。

 パンドラ文書の情報源は一人で、匿名とすることを求めているが、そのほかに条件は付されていないという。情報源は、各国の政府当局にこの文書を調べてほしいと希望しており、そのためにICIJに提供したと話しているという。