ゴルゴ13主人公の由来の先生、やんちゃなさいとうさんに向き合った

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井石栄司
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 先月24日に84歳で亡くなった漫画家、さいとう・たかをさんの代表作「ゴルゴ13」の主人公と言えばデューク東郷。口数は少ないが、依頼された狙撃は必ずと言っていいほど成功させる超A級スナイパーだ。その名前の由来となった人物が堺市にいた。どんな人物だったのだろうか。

 デューク東郷の名前の由来について、さいとうさんはこれまでのインタビューなどで中学時代の恩師の名前から拝借したことを明かしている。和歌山県生まれだが、小中学生時代を現在の大阪・堺市西区で過ごした。2012年9月26日からは堺市の名誉大使を務めた。さいとうさんの堺への思いは、市の広報用のインタビューで次のように紹介されている。

 《さいとうさんは家計を助けるために、中学を卒業すると家業の床屋を手伝うために理容師になった。

「だから、同級生と呼べるのは小学校と中学校の友達だけ。小学校の同級生と会ってるときが一番いいんですわ。今でも、『先生』じゃなくて、『おい、さいとう!』って呼ばれるから気楽でね」》

 このインタビューが掲載された市のサイトで、記者はデューク東郷の名前の由来となった人物が堺にいたことを知った。どんな人物だったのか。さいとうさんはなぜ先生の名前を代表作の主人公に用いたのかが知りたくなって、さいとうさんの小中学校時代の同級生、井上貢さん(85)=堺市西区=宅を訪ねた。

 井上さんがさいとうさんと出会ったのは小学校3年生のとき。井上さんが転校した福泉小学校(現在の西区)に、さいとうさんがいた。

 当時、同級生より頭一つ分ほど背が高かった井上さんは、小柄なさいとうさんから一目置かれた。すぐに「みっちゃん」「さいとう」と呼び合う仲になったという。

 さいとうさんとの一番の思い出は中学2年のときの寸劇だ。映画好きだったさいとうさんが怪人二十面相を模した劇を作り、さいとうさんが二十面相役、井上さんが明智小五郎役に。積み上げた机の上からさいとうさんが飛び降りたり、机の下から現れたり、まさに神出鬼没。ストーリーはまったくと言っていいほど覚えていないが、2人ともアドリブたっぷりに演じたことは、昨日のことのように覚えているという。

「麻生さんは俺のまねをしている」

 劇の後に撮った集合写真を見せてくれた。右端に写っている大人が、デューク東郷の名前の由来となった「東郷先生」という。後列に写っているさいとうさんは頭に何かをかぶり、口には吹いたら伸び縮みするおもちゃをくわえている。

 「さいとうは生前、ボルサリーノの帽子を愛用している麻生太郎さんを見て、『俺のまねをしている』と言っていましたが、どっちが先かは別にして、さいとうが昔からかぶりものが好きだったのがよくわかる写真です。この頃が一番やんちゃでした」

 井上さんによると、「東郷先生」の下の名前は磨智夫。中学時代、井上さんとさいとうさんがいたB組の担任を務めていたという。当時、20代だったとみられるが、老けていたから生徒につけられたニックネームは「おじいちゃん」。

 短髪で柔和な表情はデューク東郷のイメージとはほど遠い。東郷先生の名前を拝借したことは書籍か何かでで知ったが、井上さんは改めて本人に理由を確かめたことがある。

 「どうして東郷先生の名前を使ったんだ?」

 答えはこうだった。

 「学生時代、テストはクイズみたいで意味がないと思ったから白紙で出していたんだ。そうしたら、『白紙で出すのは君の自由だからかまわないが、答案用紙を提出するのは君の義務だ。君の答案だとわかるよう、名前だけは書きなさい』と諭されたんだ」

 さらに、こう続けた。

 「やんちゃな俺に、東郷先生はきちんと向き合ってくれた。だから尊敬するようになったんだ」

友からのプレゼントはサプライズ

記事後半では、さいとうさんの飾らないユーモアあふれる横顔などを紹介します。死の直前、さいとうさんが病床で夢見たものとは何だったのでしょうか。

 井上さんも「厳しさの中に思…

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